dip NEW ALBUM
neue welt (ノイエ・ヴェルト)
あのジョニー・マー(ex.THE SMITHS)も大好きな日本を代表するオルタナティブ・ギター・ロック・バンドdip(ディップ)
4年の制作期間をかけ 2013年発表したalbum「HOWL」「OWL」から9ヶ月…バンド史上初の短期間での制作でnew Albumが完成。
~neue welt(新しい世界)~を構築しようとするdipの新たなる挑戦がここに。
豊田利晃監督の最新作となる4月12日公開の映画「クローズEXPLODE」劇中挿入曲”HASTY”,”melmo”,”It’s late”(新録音)を含む13曲を収録。
新世界を意味するドイツ語をタイトルにしたこの新作は、dipにとって確かに新しい地平なのだ。
dipを率いるヤマジカズヒデ(Vo,G)は、昨年11月に以前から関心のあったベルリンを訪れ、東西に分断されていた街の歴史を実感してきた。この経験は少なからず新作に反映しているようだ。昨年7月に『HOWL』『OWL』を同時発売した時、すでに「次はもっと暗く冷たいものを表現したい」との構想を抱いており、完成した新作について「以前の暗さと今回の暗さを分断するためにアルバム『HOWL』の明るさが必要だった気がしている」と言う。日中が短く硬い大地から底冷えする晩秋の欧州にいたからというわけでもないだろうが、『neue welt』はゾクリとするようなクールネスを漂わせている。歪んだギターが引き込むダークサイド、ボトムの座ったビートに緊張感溢れるサイケデリア、スリリングなギターが跳ねるポップ・ナンバー、爪弾くギターが幻想的に響き、ドライな歌詞が切ないバラード、どこか優しいヘヴィ・チューン。細海魚の鍵盤が妖しく彩るサウンドで、『neue welt』はdipの持ち味はそのままにスケール感を増したダークネスに包まれた。それは、より深く自分の内面を見つめる眼差しの色だ。
振り返ってみれば、『HOWL』『OWL』は、07年7年ぶりにオリジナル・メンバーである3人ーーヤマジカズヒデ(Vo,G)、ナガタヤスシ(B)、ナカニシノリユキ(Ds)ーーが再会してから歩み続けて来た道の、ひとつの帰着点だった。そこで吐き出し切ったことで、次の道が見えていたのかもしれない。新しい道を進むべく背中を押したのが、ヤマジと親交の深い映画監督の豊田利晃だ。これまでにも『ナイン・ソウルズ』などのサントラをdipは手掛けており、dipのMVやライヴでの映像などを豊田は制作して来た。
そして新作『クローズEXPLODE』のサントラへの参加要請と共に、この映画の公開に合わせアルバムをリリースするよう提案されたと言う。前作からわずか9ヶ月で新作が完成した原動力のひとつは友情だったようだ。本作に再録され『クローズEXPLODE』の挿入歌になる「HASTY」は、『HOWL』のリード・トラックとして豊田監督がMVを制作、俳優の板尾創路が熱唱する映像が話題になった。また今回現メンバーで新録した「it’s late」(『funmachine』収録)「melmo」(『feu follet』収録)は、映画の中でdipの演奏シーンがあるそうだ。
「一度分断してまた巡り会う、というところが東西ベルリンみたいかな。で、それからの世界が<neue welt>ではないか」とヤマジ。そう、3人でまた活動を続けている今のdipこそが『neue welt』。結成23年になる彼等の歴史と。それを越える今を重ねてdipは新しい世界を作って行く。進むべき道はもう見えている。
(2.5 今井智子)