ZtZ後藤:では曲の話に移るけども。曲は完全に福永君が家で書いてきたものを、皆で作っていく形かな?

福永:ですね。家の時点ではアコギと歌と簡単なリズム作って。で、その時点で皆にメールして『各自家でなんかいじってこい』と。予習をしたうえでスタジオに入って作るパターンが多いですね。最近は。

渡辺:最近はスタジオ入っていきなりセッションで作ることも多いです。

福永:俺が弾き語って勘で合わせてもらう笑。みんなの音聴いて『そう来る?』と思います。

ZtZ後藤:福永君があらかた曲の方向性は決めてるんだ。

福永:そうですね。

渡辺:そこから、けっこう俺らに投げます。

福永:最初のイメージ、絶対譲れない部分みたいのだけ作ってきて。あとの部分は折角バンドなので皆で作ったものを聴いてみて『なるほどな』と。かなり投げてますね。

ZtZ後藤:投げるっていうのは、メンバーへの信頼だったりね。

福永:俺も頭の中にイメージはあるんですけど。最初の頃は、家でギターめっちゃダビングしてたんですけど。今のメンバー揃ったくらいから投げた方が良い曲が出来ると感じて。信頼しております。

ZtZ後藤:今のところで一番新しいシングル「ハロー彗星」って曲はさ、(全体的に)暗いよね(笑)?

一同:笑

福永:(笑)あと、まわりくどいですね。2,3周してやっと答え出たみたいなね。

ZtZ後藤:歌詞は全部の曲を見ててもそうなんだけど、凄く対極的なことを言っちゃうよね。さっき言った事の逆を言う節があるというか。歌詞を書く時にどういった所からインスピレーションを?

福永:歌詞書く前は基本小説を読みます。そうしたら敏感になります。モードが切り替わって。それが第1段階で。「ハロー彗星」はどうしたかな…。散歩してたんですよ。そしたらどうでもいいような建物が工事してあって、後日には別の何か新しい綺麗なビルになってて。別に俺その建物になんの思い入れも無いんですけどなんとなく『あー、知らないうちに変わってるし』って。なんとなく寂しくなって。で、思い出したんですけど、あそこにはあの建物があってここにはこれが小学生の頃からあって、ずいぶん(町並みが)変わって。でも一箇所ここは何だっけな?ってのがあって。思い出せなくて。で、俺がもう思い出せなくなったらもうその場所は存在しないというか。それが何か寂しくなって。その…でも別に寂しくなる必要はなくて、でも寂しくて。例えば部屋の模様替えって、前の状態が思い出せない事があるじゃないですか。したらその部屋の前の前の状態ってどんな風景でどんな人がいたのかって…。そういうのって思い出せなかったらその時間って無いようなものじゃないかって。それの感情の答えが歌詞の最後のほうの、『大切な一秒それすら忘れるけど 大切だったのはずっと本当だ』 この曲は最初ここから始めました。

ZtZ後藤:俺ね、aireziasの歌詞は好きなんですよ(笑) 俺音楽って歌詞から入る人で。メロディからじゃなく。昔から難解な歌詞が好きで。昔意味がわからなかった歌詞が今になってわかる瞬間とか堪らなくて。

栗原:その気持ちわかります。

ZtZ後藤:『え、この歌、ハッピーな曲かとおもったら不倫の歌じゃん!?』みたいな。深みがあるから。だから歌詞がとても大事で。その点で言うとaireziasは凄くて。メロディとかっていうよりも、歌詞がやっぱ天才だと思う。それはもう福永君のキャラクターだし。それはもうメンバーも気付いてるだろうし。

一同:うなづく

栗原:めんどくさい歌詞持ってくるなぁと(笑) でもその分深いというか。解釈の幅がある。

ZtZ後藤:「フラフープ」って曲。これ代表曲だと思うんだけど。一行目からね、訳がわかんないんだよね。

一同:笑

ZtZ後藤:『屋上の上 飛んでいったバルーン 砂時計を横にして』 これ意味がわかんない(笑)。どういう事なの?

福永:これを書いたときは丁度「ソラニン」注釈5という漫画にはまっていまして。芽衣子さんが風船を手から離してふわ~って飛んでって、その日に会社に辞表を出すシーンがあって。この曲ではそのバルーンのイメージを借りつつ、風船のイメージと人生のイメージをかけてるんですけど。最初これを思いついた時はそんな「ソラニン」に影響されて曲を書いたんだけど、その伏線をどう回収しようかと。"砂時計を横にする"っていうのは、時間を止める、っていう事です。一回休憩するっていうか。

ZtZ後藤:うんうん。

福永:その瞬間どっかの屋上にいて、ふうってため息ついて。頭の中でごちゃごちゃごちゃっていろんな事を2秒くらいでいっぺんに考える時ってあるじゃないですか?そんな雰囲気なんですよ。取り留めないですよね。

ZtZ後藤:サビの歌詞もね、取り留めない。
『賢い振りと馬鹿な振りで ほとんど嘘 たまに本音 楽しくないし悲しくもない』
『本当に死ぬとは思ってないから死にたいなんて言ってみたりする』

めんどくさい(笑)!


福永:おれこの最後の一行twitterでつぶやいたりしてた笑。

ZtZ後藤:あぶないわ!でも本当に対極な事を言うよね。

福永:なんだろ…、一箇所側方面だけって絶対ないから。だから賢い振りと馬鹿な振りは使い分けるし。ほとんど嘘でもたまには本音も言うし。もっとこう、【手で小さい幅を作る仕草】、繊細で曖昧なこの辺を言い当てたいが為の、表現なんですけど。

ZtZ後藤:多分あれだよね、"ほとんど本音 たまに嘘"だと何か違うよね。嘘っぽいし。ここのポイントはこの曲の中でも特に好きかな。人間ってこんなもんだろと。

渡辺:福永が書く歌詞は確かに対極的というか、そういうのはあるというか。だから対極だからこそ、繋がりっていうか、一方だけで片付くものって存在しないのかなって思ってて。そういう両極端がいつも繋がってると俺は思ってて。だから極端というか、両方言ってるんだけども、凄くちゃんとした僕達の意見というか哲学というか。そういうもんだと思うし。基本的に(福永が)持ってくる歌詞、よく判らなくても、どことなく儚いっていうかせつないっていうか。

福永:あ、それ嬉しい。

渡辺:それが出来てるのは多分、両極端をどっちも切り捨てないで受け入れてるからで。これがどっちか一方に寄ったら、別の感じになっちゃうんだろうけど。そういう所での儚さという物が、俺としては結構好きです。

福永:ありがとうございます(笑)

渡辺:こちらこそありがとうございます(笑)

ZtZ後藤:でもそうなんだよね。相手の気持ちを汲むというか。それを福永君なりにというか。でもアーティストだからちゃんと意見言わなきゃなんないし。福永君はその両方の中でもどっちかっていうと、何か寂しかったり、あんまり人生上手いこと謳歌できてなくて、そっちの人に『俺みたいのが居るんだから。俺は判るよ。』みたいなね。救ってくれるよね。大声だして世界を変えてやるぜ!うおー!!みたいなタイプではないよね。悲しい奴に響く(笑)

渡辺:主張するっていうよりも、語りかける。

ZtZ後藤:ちなみにさ、なんで「フラフープ」っていうタイトルなの?

福永:これすげぇくだらないんですけど良いですか(笑)?この曲を書いた時に、全部書きあがって『よし!』ってなって、凄いスッキリした気分で友達とスカイプしてたんですよ。そしたら友達がドンキに行った話して。『フラフープっていくらくらいかな?』って思ったらしく。店員さんに『フラフープっていくらですか?』ていったら店員さんが『ちょっと待って下さい!』って倉庫の奥まで行って探してくれて、倉庫を掻き分けて掻き分けて、『フラフープありました!』ってピンクのラメラメの出してきたらしくて…。ね?値段だけ確認したかったのに…そこまでしてくれたら買わざるを得ないと。で、結局買って(笑)って話をしてくれて。その時にこの曲のデモを友達に送ってて、したら友達が『めっちゃいい曲だ!』って言ってくれて。しかも『フラフープを回すのにテンポピッタリの曲だ』って(笑)。あのぐらいじゃないですか?イントロとかも。

一同:笑

福永:でその後で後付としてフラフープはわっかで、中央が無い、周りはあるけど中身が無いみたいなね…、まぁそんな事いっぱい考えたけど友達がそんな事言うもんだからもう「フラフープ」ってしました。

ZtZ後藤:それは…すごいね…。でもフラフープ回すときに腰のフックって必要だもんね?この曲もフックあるし(笑)。(タイトルとかって)案外そんなもんだよね。福永君って風船とかもそうだけど、割れやすい、壊れやすいもの好きだよね?儚いもの。花とか。
「水色の気球」って曲。aireziasの曲ではとても重要だよね。この曲の存在をまだ知らない人が多すぎて。知って欲しい。


福永:これは多分、今まで書いた歌詞の中で一番悩んで書いたやつです。一番時間かかって書いた。

ZtZ後藤:これ内容はさ、自分に言いたいのか"彼"に言いたいのかによって解釈が変わってくる。 『小さな頃 空が好きで水色の服を着ていた 旅立つ時 彼は気球を大好きな水色で塗ったんだ』 "彼"って言葉が出てくるけど、ここ以外では全く出てこないよね。

福永:無いすね。

ZtZ後藤:そこ以外は全部1人称。なんでここで"彼"?この曲はここにちゃんと想像の余地があるというか。自分を観る自分がいるというか。彼=自分なのかな?とか。それか、昔あんな奴いたよな?今何してるか知らないけど、とか。

福永:これ"彼"のとこ"自分"ってしてたら、ダサいですね(笑)

ZtZ後藤:この曲は何で出来たの?

福永:去年の夏かな?その頃には演奏してました。その時はバンドを続けるか否かで悩んでまして。バンド続けるか?っていうか。その時色んな人と飲む機会があって。色んな人の色んな人生を知って。バンドマンだったり、昔バンドマンだったり、自信満々で音楽やってるけど収入に結びついてない人だったり、食事のためと割り切ってビジネスとして音楽やってる人だったり。皆それぞれ個性的に自分のカラーでやってるように見えたんですけど、僕は無色透明で。その時々のその場のノリでそれなりに生きてたんですけど…それなりにしか出来ないんですけど。俺の色ってのは無いな、って。凹んでたんですよ。で、凹んでたんですが、地元にある喫茶店でコーヒーを飲みながら空見てたら…したら空がもう、真っ青で。綺麗な水色だったんですよ。例えば、超綺麗な水色の中に澄んだ水色の気球があっても絶対判らないだろうなって。で、あそこに気球があるとして、今例えば俺が仮に死んだとしても、何人かが悲しんで何人かが…それこそ世界に占める俺の存在の割合ってそんなに大きくなくて。多くの人にとっては見えない水色の気球レベルなんだろうなって思って。で、空みながら、今あそこに気球があって、目で追ってて、『見えなくてもあいつ頑張ってるな』っていう…ちょっと頭おかしい妄想をしてて笑。その日はそれで終わったんですけど。見えない気球があって、例え飛んでたとしても気付かれなくて、気付かれなくても飛んでる人は居て。気付かれないから意味が無くて。でも本人には意味があるのかも知れない、て思いつつ。そんな気持ちを抱えてて『俺ほんとにバンドやんのかな?』って。『やらないかな?』って思ってて。一回これをテーマに歌詞書こうとバーっと書いたんですけど、全然良くなくて(笑)。ビリーって破って。何回も何回も繰り返してて、で、段々固まって。"選んだものは全部正しいよ"ていう一言が浮かんで。「ハロー彗星」もこれもそうなんですけど、普段は一行目から歌詞を書き出すことが多いんですけど、この曲はその一言が出来てから『あぁ意味が判って来た』って。結局その、自分らしくない自分とか、世界に占める存在の小さな自分であっても、自分は自分であることを辞める事は出来ないし、どんなに個性的になったとしても自分は自分だから…わかんなくなってきた。……自分を背負っていくしかねぇなって思ったんです。あと、最初の行の <小さな頃 空が好きで水色の服を着ていた> これは言わなくてもいいんですけど、俺最初音楽好きでやってたんですけどだんだんつらくなってきて。その頃は。楽しかったからやってたのに、これを職にしようって活動してたら辛くなって。大好きな水色に塗ったはずだった気球が見えなくなって、なんだろ、その水色自体が好きじゃなくなったっていう。俺は水色好きだったけども今好きじゃなくて。その辺がかかってる。そんな曲でした。長っ!!!!

一同:笑

ZtZ後藤:うん、そうだよね。さっきから全部暗い!暗いんだけどなんだろ、過去にあった暗さが出ているというか。今わりと割り切ったけどその頃の俺は恥ずかしくって見てらんないような。表現をとってもどこか、女の子っぽいよね?女々しいとかじゃなくて。男友達には気付かれない所をつく。「水色の気球」は色んな人に届いて欲しいな。

渡辺:歌詞見た感じだと、(俺はこの曲)未来に向いていると思います。

栗原:個人的には、ずっと未来見ている感じだと俺は思う。

福永:未来だと思う。

ZtZ後藤:あー凄いね。俺と両極端だ(笑)。

ZtZ後藤:「日回り」って曲ね。aireziasってYoutubeとかにプリプロとかのっけたり、歌詞とかもHPに乗せたりしてるよね。その中でも「日回り」は色んな人が色んな場所で聴いてると思う。ちなみにサビなんですが。 『Cos it`s so messy world,it`s great just to live.』

福永:これは英語です。

栗原:意味、ずっと気になってました。

福永:意味は秘密です。これ最初ららら♪で作ってたんですけど、だせぇなって。この英語に意味を持たせたかったというよりは、英語にすれば皆音を聴いてくれるなと。言葉にしたら言葉になっちゃうなぁって。ここは皆で歌うイメージだったんで。意味とかじゃなくて音程を際立たせたくて英語にしました。意味はあるけども秘密。知りたかったら皆さん自分で調べてください。

ZtZ後藤:なるほどね~。

福永:基本僕英語使いません。

ZtZ後藤:「日回り」はaireziasの中でも特に普遍性があるから、皆素直に入れるよね。タイトルは向日葵と日が回るのダブルミーニング?

福永:ややダブルミーニングです。この曲は9月くらいのイメージで。向日葵がちょうど枯れる頃。向日葵が、日が回って枯れる頃。だからです。これ書いたのが高校2年の時で。結成当初のオリジナル曲が3曲ある中の…、他は全部ボツにしまして。黒歴史。これが初めて書いた曲にしたいです。この曲は降ってきたんですよ(笑)。風呂で口ずさんでたら出来た曲で。ろくに体も洗わずに風呂から出てきて携帯のボイスレコーダーに録音して、もっかい風呂で体洗って出てきて聴いたらやっぱ良い曲で。その時まだろくにギターも弾けなくて、ジャーンてギターのコード…俺押さえみたいのでやって。この曲はアレンジもほぼ俺がやりました。歌詞も全然考えこまなかったです。一瞬で出てきた感じです。

ZtZ後藤:大抵世に言う名曲ってそうなのかも。

栗原:大体スタジオで俺らに投げるけど、この曲は凄い指示がありました。