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【UKP OFFICIAL INTERVIEW】ウソツキ 『金星人に恋をした。』リリース記念バンドヒストリーインタビュー
ミニアルバム『金星人に恋をした。』でデビューするウソツキ。全6曲の中に、耳馴染みのよいメロディとクオリティの高いアレンジ、現実とリアルの中間を鮮やかな色彩で捉えた歌詞を絶妙なバランスで心地良く響かせる。繊細でいて芯の強さを感じさせる竹田昌和(Vo&Gt)の歌声がそこに乗り、吉田健二(Gt)、林山拓斗(Dr)、藤井浩太(Ba)の4人で楽曲そのもののドラマを丁寧に奏でていく。
場面ごとに〈キミと僕〉のカラフルな感情が交差するミディアム・ナンバー「金星人に恋をした」、いつもの満員電車を描きながらガタンゴトンのコーラス・ワークで楽しい仕上がりになった「京葉線SOLDOUT」、〈最初はグー〉なんてキャッチーな言葉選びながらもテーマは壮大かつシニカルな「ピースする」、カズーの音色も陽気なカントリーロック調がフレンドリーながら何気なく大事なメッセージを込めた「ダル・セニョールの憂鬱」など、デビュー作ながら、オリジナリティ豊かでポップな表現力がある。〈王道歌ものバンド〉でありながら〈ウソツキ〉という名前を持つ彼ら4人は一体どんな想いで音楽をやっているのか?その企みと確固たる想いを語ってもらった。[取材・文/上野三樹]
–まずはウソツキ結成のいきさつをお聞きしたいんですけど。
竹田:僕は高校生の時から曲を作っていて。ドラムの林山くんがバンドをやりたいってことで僕を誘ってくれたのが2011年の2月で、ふたりで始めました。それから2012年の3月に自主制作盤をライブ会場だけで発売するんですけど、このふたり(吉田、藤井)はまだ加入していなくて。メンバーを探すのに1年ちょっとかかったんですけど、2013年の夏頃に今の4人になりました。
林山:僕はもともとドラムをやっていて、バンドがやりたかったから、いいシンガーソングライターがいないか探してたんですよ。そんな時に竹田さんとたまたま一緒にやる機会があって、彼のオリジナル曲をやったんですけど、いいなと思って「一緒にやろうよ」って声をかけたんです。
–その当時、竹田さんはどういう状況だったんですか?
竹田:高校を卒業して、フリーターをしながら弾き語りで活動をしたりしていました。高校生の頃に組んでいたバンドがあるんですけど、それが解散して。もともとギターが好きだったのでギタリストになりたいと思って、すごい練習してた時期があるんです。林山くんとは、通ってた音楽の専門学校というか塾みたいなところが一緒で、僕はギター科で。そこで教えてくれた先生が「竹田くんは歌ったほうがいいと思うよ」って言ってくれて。曲を書くのは好きなのでデモテープで自分で歌ったりしてたからか……ギターの才能があまりないと思われたのか(笑)、とにかく歌をすすめられたんです。
–では地元の友達とかじゃなく、音楽を通じて出会ったんですね。まずは二人で始まって、メンバーを探すと。
竹田:サポートで何人かのベーシストを入れて、スリーピースでやってたんですけど。藤井くんが入るまでが長かったですね。お互いに色んな面で合わなかったりとか色んなパターンがあるんですけど。それか僕の性格に問題があったのかもわからないですけど(苦笑)。
–竹田さんは性格に問題があるんですか?
藤井:そう……。
竹田:僕はないと思ってるんですけど、今「そう」って言われました(笑)。でも藤井くんのこの大らかな、懐の大きさでね……。
吉田:懐の大きな藤井くんが「そう」って言ったんだよ!(笑)。
一同:(笑)。
–では藤井さんとウソツキはどういう出会いだったんですか?
藤井:僕のベースのお師匠さんがいるんですけど。その人の知り合いがウソツキっていうバンドのベースを探してるって聞いて、人づてに僕を紹介してもらったっていう……間に4〜5人入ってるんですけど。
–だいぶ遠かったんですね(笑)。
藤井:それが去年の5月くらいです。最初はサポートみたいな形でライヴを2〜3本くらいやった後、正式に加入することになりました。その頃、僕もフリーターしながら音楽やってて、バンドをやりたいなと思いながら、いいバンドを探していたので、すごくいいタイミングだったのでびっくりしました。こういうポップスの、ちゃんと歌のあるバンドがやれて良かったなって、今になって思います。
–で、吉田さんが最後に加入。
吉田:はい。僕は藤井くんから、「サポートでギターやってみない?」って言われて。
–吉田さんと藤井さんはもともと繋がりがあったんですね。
吉田:はい、もともと友達で。
藤井:うん。
吉田:もう2年以上ですよね?
–結構、浅いな(笑)。
藤井:あはははは。
竹田:大事なのはその中身だってことが言いたいんでしょ?
吉田:そう、長さじゃないと(笑)。で、「今度、ウソツキのライヴをサポートでやってみない?」って言われて。デモが送られてきた時点ですごい完成されてて「いいな!」と思ったんですよね。2回目ぐらいのライヴで「事務所の社長さんが来てるんだけど」って言われて呼び出されて。
竹田:僕らはその時、半分諦めかけてたんですよ。メンバーは4人で、っていうヴィジョンがあったけど見つからないから、もう僕らは3人でウソツキをやっていくかって8割方諦めてた時に、藤井くんが吉田くんを連れてきてくれて。吉田くんはすごいハマったので、後は押せば何とかなるかなと思ったので、社長を連れてきて「君、いいと思うんだよね!」っていう話をしてもらったんです。
吉田:「吉田くーん、君の音すごい気に入ったんだよね」って(笑)。
–バンドのメンバーが揃う前から、ウソツキは精力的に活動してたんですね。
竹田:そうですね。本来はきっと、メンバーが固まってからライヴやったりするのが綺麗なのかもしれないですけど、その当時、僕らは二人で始めた時から少ないながらも観てくれる人がいて、止めちゃうと、忘れられちゃう気がして怖くて。それでずっとサポートを入れてライヴをやっていた感じだったんです。
–お話を聞いていると、みなさん竹田さんの書く曲に惹かれて入ってる感じですね。
藤井:そうですね。僕もメンバーに会う前にデモを聴いて、半ば決めてる感じでしたから。
竹田:会ってみたら詐欺じゃねえか、こいつ性格が破綻してるぞって?(笑)。でも曲が唯一、僕らを繋ぐものだったかもしれないですね。
–では実際やり始めて4人の人間関係はどうだったんですか?
4人:……。
竹田:この言いづらいみたいな雰囲気がもう、意味を持ってますよね(笑)。
吉田:まあこのバンドをやってなかったら、おそらく友達にはなってないかなと。
竹田・藤井・林山:あはははは!
吉田:俺は友達みんなと車で海とか遊びに行ったり、お祭りとか行きたい人間なんですけど。それとは真逆なんですよ、みんな。
竹田:そうだね。吉田くんだけ、バーベキューとか、アウトドアな姿勢を持ってるんですけど。僕ら3人はどっちかって言うと、ゲームする(林山)、寝る(藤井)、家でこもる(竹田)っていう完全にインドアな人間なんで。
–じゃあ吉田さんがみんなと親睦を深めようと何かに誘ってもつれない感じ?
竹田:もう誘う勇気すらないよね?(笑)。
吉田:この4人で海とかもう、絶対行きたくないです!!
藤井:僕ら3人は泳がずに遠巻きに見てる感じになるからね。
–ちっとも盛り上がんないね(笑)。でもバンドには吉田さんみたいな人も必要ですよね。
竹田:いや、ほんとそうなんですよ。最初は3人でやろうってなってたんですけど、吉田くんが入ったことで僕らが完全に根暗なバンドじゃなくなりましたから。ただ、吉田くんも決して、イケイケなわけじゃないんですよ。
林山:イケイケに憧れてるタイプだよね?
吉田:ケツメイシとか聴いて「こういう夏、過ごしてえな」って(笑)。
藤井:結局インドアじゃねえか!
–(笑)。では音楽を始めた背景や聴いてきた音楽のことなどもお聴きしたいんですが。竹田さんは、さっきちょっとおっしゃってましたが、割とひきこもりタイプだったんですか?
竹田:そうですね。音楽は高校2年生の時に始めるんですけど、それまでは全然聴いてなくて。バンドを始めた当時はフジファブリックがすごい好きで。でも僕どっちかというと作るほうが好きなのであんまり聴かなかったんですけど。だからルーツというと……0才から3才くらいまで、母親が何故か音楽ができる子に育てたいという実験的な精神で、ひたすら僕の耳元で童謡を流してたらしいんですよ。自分でカセットでコンピみたいなものを作って。それをずっと聴いてたみたいです。その後、小学生とかになってから音楽は全く触ってないですね。歌は好きだったんですけど。それこそ中学生くらいになると19とかサスケとかが流行ってたんですけど、僕は全然そういうのにも付いていかなくて。そんなに集団行動もしてないタイプだったこともあって、音楽を聴き始めたのがギター始めた時だったんです。
–高校2年生の時に何があったんですか?
竹田:その当時、高校生バンドのドラムの奴が「バンドやりたいんだけど、ギター弾いてくれる奴を探してて」って言ってきて。「何で俺だよ」と思ったんですけど。やろうって言ってくれたから「じゃあいいよ」ってギターを買って始めたんです。
–でも集団行動が嫌いだったんでしょう?
竹田:そうなんです。ただ誘ってきた友達も、あぶれてた奴だったので。そいつは友達3人ぐらいいて、僕はゼロだったんですけど。
–うん……。それはなんで?
竹田:なんででしょうね、僕、性格に問題があるんじゃないですか?
–さっきからご自分で性格のことを何度かおっしゃってますけど、自覚としてはどういうものなんですか?
竹田:自覚としては……きっと誰も寄り添ってこないから。何か避けられてる感みたいなのが昔からありますね。最近はそんなことないんですけど(笑)。それこそ小・中・高はめちゃめちゃ避けられてたんで。いじめられた時期もあるし、無視された時期もある。一番、辛いのは無視されてる時期だと思うんですけど。でもまあ、その方が長くて。
–どのくらい?
竹田:それが高校2年までですね。僕は幼稚園ぐらいは友達が多くて……といっても3〜4人かな、普通に過ごしてたんですけど。当時、いじめられてる子がいたんです。僕は正義感が一番強い時期だったので、「やめろよ」って言ったのか何なのか、とにかく助けたらしいんですよ。それによって僕がいじめられるっていう、そこからのストーリーがあって。
–一度そういう立場になると、なかなか抜けられなくなったってことなのかな。
竹田:あとは話が合わなかったんですよね、基本的に。同世代と話しづらくて、年上の人の方が話しやすかったので。
–だったらもうひとりでいいやって?
竹田:っていうのもあったのかもしれないし。「こいつらダメだ」みたいな、僕はそういう風に思っちゃうタイプではあるんですけど。まあ、今から理由を探ってもわかんないですけどね。
–でも高校2年でバンドを始めたことは大きかったですよね。誘ってくれたのがその人だったからやったわけでしょう?
竹田:そいつとは中学の時は別の学校でお互いにテニス部だったんですけど、高校で一緒になった時に練習試合とかで僕のことを見ていたらしくて。同じクラスに唯一、知ってる奴がいた、ということで彼は誘ってきたみたいで。
–見たことがある、程度でバンドに誘われたの?
竹田:そうです(笑)。向こうも友達いないし。当時、そいつに「これで衝撃を受けなかったらギターを始めなくてもいい」って言ってアルバムを貸してくれたんですよ。彼がその時にすげーはまってた、レーサーXっていうハードロック・バンドなんですけど。超絶技巧で、全然コピーできなかったですけど、すげえカッコ良くて。だから一時期はハードロック以外は音楽じゃないくらいに思ってた時がありました。それからは音楽を自分で聴くようになって「こっちのほうが面白いな」っていうものをどんどん見つけていったんですけど。
–どうしてそれが今、こうした歌ものの曲を書くようになったんでしょうね。
竹田:どうしてでしょうね。でも、それは自然な流れなんだと思います。今になって、童謡が効いてきたのか……。
–0才からの童謡と高2からのハードロックが中和されて歌ものロックに!?
竹田:そんな上手くいくんすかね(笑)。でも高校生の時に、これはあんまり言ってないんですけど……一番ハマったのはYUIなんですよ。ラジオで曲が流れてきて。その当時、僕はあんまり人と話さなかったけど、別に話したくなかったわけじゃなくて、自分自身、変わりたい何かがあったんだと思うんですけど。デビューしたての頃のYUIの葛藤が僕の葛藤とテーマが似てる気がして、感情移入して。だから初めて自分で買ったCDがYUIの〈東京〉のシングルでした。
–竹田さんの葛藤っていうのはどういうものだったんですか。
竹田:友達を作りたかったんですかね、やっぱ。認められたかったのかもしれない。音楽を始めると、友達が増えるんですよ。それまでバンドやってる奴らは廊下の隅で集まってて「近寄りたくないな」って感じだったんですけど。僕はギターを始めてすぐにコツを上手く掴んで、オリジナルを作り始めて、文化祭とかでやったりすると「お前、誰だよ!?」みたいな感じになって(笑)。で、話してみると、他の連中よりも全然話が合うから。友達がちょっとずつ増えて行きましたね。
–音楽をやることで、これまでの自分とは変わっていく。
竹田:変わって行きたいっていう願望も強かったんでしょうね。音楽を初めて3ヶ月で「よし、俺は音楽家になるんだ!」って気持ちが生まれたんですよ。そこからはだんだん楽しくなっていったし、人とも話すようにはなりましたね。
–聴いてきた音楽のバックボーンどうこうよりも、ご自身が音楽に救われてるわけですよね。
竹田:ああー、そうですね。音楽で人を救うって何だよとか思ってたんですけど。確かにそうですね。
–デビューミニアルバム『金星人に恋をした。』を聴かせていただいて。もうしょっぱなから、曲はもちろんアレンジも素晴らしいなと思ったんですけど。どんな感じで制作されてるんですか?
竹田:アレンジに関しては僕がデモの段階で土台を作って、みんなでやっていくんですけど。林山くんは付き合いが長いし、藤井くんはハードロックが好きだってことで何となく予想がつくんですけど、吉田くんだけは予想がつかないので、ギターに関しては吉田くんの個性が強いかなと思います。
吉田:でも結局、自分の趣味みたいなものを出そうとしても無理なんですよ、曲が完成されてるから。そこに寄り添うものを出せるようにがんばるしかないっていうのはありますね。
–曲の良さを最大限に響かせたいっていう心意気をすごく感じる演奏です。
藤井:歌の邪魔はしちゃいけないなって思いますね。あくまでポップスというか。僕も昔はハードロックが好きで、いかに自分が目立つかみたいなところで高校3年間は過ごしてたんですけど。でも今こうしてやっていると歌があるから音楽なんだなっていうのは最近思ってて。どうやったら歌を引き立たせられるのかなっていうのは考えてますね。
–林山さんはどうですか?
林山:ウソツキをやっている中で葛藤みたいなものはあって。竹田さんの曲と自分のドラムを勝負させて勝ちたいなっていう気持ちはあるんですけど、でもやっぱり歌が引き立つドラムが叩けたら気持ちがいい音楽になるし。曲と自分のプレイの勝負っていうのは自分の中であるので、そこは今後も続いていくところだと思うんですけど。でも、ウソツキの場合は最初にカウントして曲が終わるまで、演奏してるっていうよりは4分間、物語に入ってるっていう感じなんですよね。風景がすごく想像できるので。
–なるほどね。
林山:新曲をやるときは、いつも練習してるスタジオの壁の絵ばかりが見えてるんですけど、それがだんだん、ギターが入ってベースが入って、と重なっていくと曲の世界観が見えてくるんです。曲が成熟してくればしてくるほど色濃くイメージできるし、そうなるようなアレンジを必然的にしていくべきだと思ってて。それができるこの4人になれたからこそ、気合いの入り方も変わってきました。
–このデビューミニアルバム『金星人に恋をした。』は、どういう作品にしたかったんですか?
竹田:この作品には僕が林山くんと一緒にやってた時代の曲から、このメンバーになってからの曲も入ってて。「初めまして、ウソツキって言います。宜しくお願いします!」っていう気持ちで作りました。みんな僕らの事、知らないだろうし。
林山:ウソツキっぽいですね、全部。
–うん。どの曲から好きになってもらっても誤解がないというか。すごく筋の通った1枚だと思うんです。
竹田:そうですね。この6曲、基本的には速い曲はないんですよ。僕ら的には力まずにできる曲たちで1枚にしました。
–これはウソツキというバンド名にも通じてくる話だと思うんですけど。現実とファンタジー、どういうバランスで曲にしてるんですか?
竹田:一番最初に頭の中で、僕ら4人のテーマでもあるんですけど「王道歌ものバンド」なので、パッと聴いた時に、その人の懐に入り込むとまでは言わないですけど、隣ぐらいに座らせてくれるような、そんなメロディだったり言葉を選んでるんですけど。僕自身、一番大事にしてることがあって、最初はパッと聴きやすさから入ってもらって、だんだん聴いていくうちに、その人自身に「あ、これはこういうことを言ってたんだ」とか「いや、私はそうは思わない」とか、頭のなかで想像を膨らませて欲しいんです。そうなった時に、いい意味で裏切られた感じというか。「王道歌ものバンドです」、っていうことで隣に座らせた奴が意外とクセの強い奴だったっていう、それで「ウソツキだね」とかって、愛を持って言ってくれたら嬉しいんです。聴きやすいけど、でも何か裏があるんじゃないか?って思ってもらえたら、僕らがウソツキっていうバンド名を付けた意味があるなと。
–では聴きやすさという間口があるのは大前提なんですね。
竹田:そうですね。それはこの4人が音楽をやる上で大事にしてることで、聴きやすさの奥に僕が込めたメッセージがあるので、そこまで辿り着いて欲しいんです。
–例えば「京葉線SOLDOUT」のような日常のリアルを描いた曲もありますし、ただファンタジーを見せるわけでもないじゃないですか。
竹田:そうですね。「京葉線SOLDOUT」は現実じみてますけど、僕が想像した世界の主人公を書いていて。そのファンタジーレベルに違いはあるんですけど、全て夢を見せるような曲ではないんですよ。ディズニーランドみたいに作ってるわけじゃない。
–ちなみにディズニーランドの帰りに京葉線に乗る時の、あの現実味が私はすっごく嫌なんですよ。だから京葉線って現実の象徴って感じがします(笑)。
竹田:あはははは!確かに。僕自身はこの曲は、正解は何だっていいよねっていう楽な気持ちで作ってるんですけど。「井の中の蛙大海を知らなくとも/三匹の子供に恵まれ幸せとなった」っていうのが全てな気がしてて。全ての曲において、こうしなさいみたいなことは言ってないです。こういう人がこんな風に思ってました、というような。それは僕の性格かもしれないですけど。
–現実をどう届けるかにこだわりがあるんですね。
竹田:そうですね。それが歌にする意義でもあります。
–ひとつ共通して感じたのは、竹田さんは、人を信じたくて歌ってるのかなと。
竹田:人を信じたくて……?
–例えば「君は宇宙」でも君の全てを知りたいのに知ることなんてできない、という気持ちが歌われていたり。「ピースする」でも信じあうことが出来れば、と歌われていますよね。
竹田:そうですね……そうだと思います。確かに僕自身が……ずっと一人だったからなのかな?それが出てきちゃってるんだな、じゃあ。確かに信じあってる二人は出てこないですからね、僕の人生のテーマみたいなものがここにあるのかもしれないです。僕は人は結局ひとりだっていう風に考えてて。「人はひとりでは生きてはいけない」っていう言葉もあるけど、結局はひとりだから。死ぬ時もひとりだし。だからひとつになりたいっていう願望はあるのかもしれないです。
–人のことなんて信用できないって諦めてるわけではなくて、信じてみたい。ちゃんとそこに希望があるというか。そういう段階の作品だと思うんですよね。
竹田:ありがとうございます、聴いていただいて。僕が気づかなかったことに気付いてもらって。そうかもしれないです。
–「アオの木苺」でも最後は「僕らこれからどうなるのかな」と書かれていますし、この作品がリリースされることで音楽を通じて出会う人たちに対する期待や希望があるのかなと。
竹田:人と、繋がりたかったんですね。音楽をやることで、僕は人と繋がったから。
–最後の「ダル・セニョールの憂鬱」では「いったい誰がぼくを見つけて/くれるのかなんて分からないから/ほんとはぼくだって歌いたい」ですから。
竹田:まるで寂しがり屋みたいですね(笑)。
–さっき、隣に座ってくれるような音楽を作ってる、と言いつつも、自分のことを語る時に「誰も近寄らなかった」とか「誰も側にいてくれなかった」と言ってましたよね。だからこそ誰かの側にいれるような音楽が作りたいっていう願望があるのかもしれないし。
竹田:最近、気付いたんですけど。言いたいことがあって、伝えたいメッセージがあるなら、言葉にすればいいじゃないかって思うのが一番最初の思考じゃないですか。だけど言葉にしても伝わらないことがいっぱいあるなと僕は思っていて。何より、聞いてくれないんですよ、俺が喋っても話が長いんで、たぶん吉田くんは寝るし、林山くんは一瞬で消えて、藤井くんはうまいことやる。
藤井:どういうことですか(笑)。
竹田:昔から僕は色んな人に話をしても聞いてもらえなかったから、聞いてもらいたくて。僕は音楽は道具だと思ってて。僕の気持ちを伝える為のひとつの手段。だから伝えたいんでしょうね、ずっとひとりだったから。
–その為の歌詞でありメロディであり物語であり。
竹田:そう、面白いものにして。「自分はこう思ったけど、どうなの?」って何か反応を返して欲しいから、ちゃんと余白を残してます。
–だからウソツキの楽曲はポップであるべきなんですね。
竹田:はい。それが僕らがポップをやる意味でもあります。これからの具体的な目標とかはないんですけど、僕はきっと人と繋がっていきたい気持ちがあると思うので、僕と音楽を通して話してくれる人がどんどん増えていったらいいなと思います。そして本当は何かを変えたいんです。中高生の時に集団から離れて人を客観的に見ていたり、テレビを見たりしても感じる、なんかおかしいこと、行き過ぎた考え方や集団妄想みたいなものに僕はすごく憤りを感じるので。それをもう一度考えましょうっていう、例えば今回の作品でいうと「ピースする」とかに強いと思うんですけど。こうしたテーマの曲を僕は今後も書いていくと思うし、その為にたくさんの人に楽しんで聴いてもらって、「そうですよね」って真面目に言ってくれる人も増えたら嬉しいです。
2014.06.04 リリース
ウソツキ / 金星人に恋をした。
01. 金星人に恋をした
02. 君は宇宙
03. アオの木苺
04. 京葉線SOLDOUT
05. ピースする
06. ダル・セニョールの憂鬱
DAIZAWA RECORDS / UK. PROJECT
UKDZ-0154 [¥1,000 + tax]