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【UKP OFFICIAL INTERVIEW】おとぎ話 有馬和樹『SALE!』完成インタビュー

おとぎ話が、1st Album「SALE!」レコ発ツアー・ファイナル10周年記念スペシャルGIGを、スペシャル・ゲストに前野健太を迎えて11月17日(金)下北沢CLUB Queにて開催いたします。
その開催を記念して、10年前のリリース・タイミングで作家の樋口毅宏さんにマスコミ向けの資料用にやっていただいたおとぎ話ボーカルの有馬和樹のインタビューを掲載いたします。

聞き手:樋口毅宏(おとぎ話サポーターズクラブ)2007.6.22下北沢にて

ロックをはじめるきっかけ
「子供の時から、実家や車の中で父親が好きなビートルズやツェッペリンやピンクフロイドなどが聞こえてきました。
高校の時にエレカシの宮本さんがギター弾いているのを見て、『あんなに不器用な弾き方でもカッコよければいいんだ』って思って、ギターを手にしました。同時期にDaft Pankも好きでしたけど、あれをやろうとは思いませんでした。Neil YoungやPavement、エレカシとかが好きで、どこかで「同じことを考えている人だ」って思ったんですよね。大学入って初めてバンド組んで、轟音でサイケみたいな、ゆらゆら帝国やDMBQみたいな曲を作ってたんだけど、バンドでやってるうちに、『僕
がやりたいのは、メロディーがある曲なんだ』って、わかったんです」

バンド名の由来
「バンド名はサイケっぽく、“Fairy Tale”にしようと思ったんだけど、前任の女性ドラマーに「横文字はダサイ」って断言されたので、日本語に訳して、おとぎ話にしました」

アルバムタイトル「SALE!(セール)」
「僕の中では『夕方から夜にかけて』という仮タイトルがあったんですけど、ドラムの前越くんが、『おまえ、レコード屋に“おとぎ話、SALE!”ってあったら最高やろ。目立つし、「いったい何だ!?」ってみんな思ってくれる』って言うから。『こんな名曲が11曲も入って2000円! おとぎ話、売り出し中!』みたいな」

ファーストアルバムの構想
「いろんな友達のデビューアルバムを聴いてきて、自分だったら、Lo-Fiなんだけどメジャー感もあるような、派手というか、一聴して耳に残るようなアルバムにしたいと思ってました。ファーストアルバムって一番最初に残るものだし。バンドを7年間やってきたけど、さんざん世間に無視されてきましたから、みんなで大合唱出来るようなメロディの良い曲をそろえて、みんなが絶対に無視できないようなファーストアルバムにしようって考えていました。」

前向きな歌詞
「歌詞に関しては、マイナスなネガティヴな表現にはしたくないんです。明るい未来や夢を見れない今の時代に絶望を共有するのって簡単だと思うんですよ。マイナ
スのことを普通にマイナスで言うのって、僕にはすっごくつまんないことなんです。
絶望を“偶然よく晴れた空がケンカして夕焼けを生んだ”って表現に言い換えた方が絶対にいいと思うんです。難しいけど、僕だったら歌えると思うし、きれいごとと言われようと、そういうことに挑戦していきたいんです。Nirvanaのカート・コバーンも絶望してたけど、『Lithum』みたいに「I’m so Happy」って歌う方が、ウソかもしんないけど、そう言えてしまうことの方に興味があります。「なんだかんだ言っても楽しい方がいいかな」って。普段からつまらない日常でもテレビで見た面白いこと言って友達を笑わせたい性格ですし、ライブでもみんなに笑って欲しいじゃないですか。落ち込んで、その気分をひきずったままで曲を書いたことは一度もないんです。僕は夢のあるおとぎ話の世界観で歌詞を書いていきたいんです」

このアルバムの満足度は
「聞いてもらった友達には、これまでの集大成で名盤だと言われてますが、…..僕にとっては集大成じゃないですよ。そう言った時点で終わっちゃうじゃないですか。まだ、なんにもはじまってませんし。メンバーや応援してくれてる家族やはじめて僕の音楽を認めてくれたUFO CLUBの店長やライブにさそってくれた峯田さんはじめ銀杏BOYZのみなさんのおかげでやっと少しづつ支持してくれる人が増えているんですけど、もっともっと万人に広く受け入れられたいんです。ばあちゃんにも「和樹、いい曲だねぇ」って言ってほしいもん。ようやくスタートラインにたてた感じです」

 

 

全曲解説

▼パレード
{1,2,3,4,5,6,7,8とカウントして始まるドラムやギターのリフ、謎のコーラスワークなど度胆を抜くような、とか、ロックの規範に囚われていない賑やかなアッパーモードからおとぎ話のファーストアルバムは始まる}

言いたいことは一つだけ。小学校一年生のときに先生から「決めたことはやり遂げろ」って教わって、それ以来自分の中では「続く」っていうことが一番重要なんです。「終わり」って言うのは簡単だけど、「続ける」のは大変なことだから。「バンドやめるの? 続けなよ」って。人にだけでなく自分にも言ってるし。一曲目はこれしかないってずっと考えてました。90年代のUKやオルタナとか、雑多なシーンを聴いてバンドを始めた者としては、フォークみたいに言葉じゃなくて、バンドの音であっ!と言わせたかった。
イメージ的には、Primal Screamの『Screamadelica』の一曲目『Movin’ on Up 』の「あがっていく」感じ。

▼おとぎ話の空
そもそもは「前髪を切る」ってことをうたにしたかった。で、「あれ、なんで俺、
前髪を切りたいんだろう」って考えたら、かっこいい顔してないから、髪を切ったり奇抜なことをやって人の気を引こうって思ってたからなんですね。
練習しに行く前に、一曲作っとくかと思って、「そういえば昨日髪切ったな。ゴミ箱に髪の毛あるな。窓開けたら、もうそろそろ夕方か」って。普段ベースの風間くんに電話してるような自然体で。
「時計の針を手に入れよう」っていうのも、偶発的に降りてきた言葉を大事にしました。本から探してきた言葉じゃないし、ひらめきが出なくなったら音楽やめると思います。
イントロは大好きなThe Velvet Undergroundの『There She Goes Again』へのオマージュ。 後半の、伸びのある女性コーラスは「ぱぱぼっくす」の澤田智子さん。
僕が大学一年のときに偶然聴いて以来のファンで、「自分のアルバムに澤田さんの声が入ったらどれだけ素敵だろう」とオファーして、実現しました。
「あの階段の下でいつかまた出会うだろう」って歌詞は、僕、東高円寺のUFO CLUBで働いてんですけど、その店に降りる階段のことです。うたにすることで恩返しみたいな気持ちもあったんです。

▼NIGHTSWIMMING
{「きみの名前を呼んだときにはもう僕はここにいないのさ」という必殺フレーズと情景が浮かぶ美しい歌詞。今作でのベストソングの呼び声が高い}

タイトルはREMの曲から。久しぶりにカノジョができたって浮かれれても、意外と寂しかったりするんですよ。空虚さは変わらず残ったりして。そういう気持ちを描こうと思った。だから、「春が来た」じゃなくて、「春が来てしまったよ」なんです。「こんなうたを歌う日本のバンドがようやく現われたか」と思ってもらえたら嬉しいです。

▼Boys don’t cry
{有馬のおセンチが炸裂する男子応援ポップソング}

この曲が出来たときにドラムの前越くんに聴かせたら、「おまえ、もうこれ以上いい曲は書けないぞ」ってすっごい感動してくれたんですよ。前越くんは曲を作って持っていくと、「めっちゃいい曲や」ってリアクションをしてくれる。彼にとって良くない曲でも、「有馬が持ってきたんだからみんなで良くしようや」って言ってくれるんです。おかげでこの曲は、全部の楽器が歌っててうるさい。ドラムのスネアの一音さえ歌ってるから。
タイトルはThe Cureの名曲から。日本でこんなタイトルの曲聞いたことがないから作ってみました。人なつっこいメロディをもつビートルズっぽい曲にしようと作りました。今では日本でビートルズを感じさせるのは奥田民生さんぐらいなので、若手が続かなきゃと思って。

▼LOVE
{有馬曰く、学園三部作のシメにあたる曲。予備校で好きな女の子の近くに座って、わざと消しゴムを落として、その娘に拾ってもらったり、なにげに机の上に音楽雑誌を置いて会話の糸口を探したという実体験に基づいて作られた。ちなみに、当時女の子のほうから声をかけられたことは一切なかったという}

わからないと思うんですけど、「女性誌みたいな曲」にしたいと思っていて、曲のタイトルを「LOVE」か「キューティ」か「ノンノ」のどれにする? ってメンバーに聞いたら、そりゃ「LOVE」しかないでしょう、って。
BuzzcocksとElvis Costelloを日本の中学生が歌ったらこうなりました、って曲。

▼アゲイン
{7分に及ぶバラードは、おとぎ流「卒業ソング」。有馬が大学を卒業するときに作った曲。普段は寡黙な美形ギターリスト牛尾が、わんわんギターを哭かせまくる。
キーボードはサニーデイ・サービスなどで有名な高野勲さん。「Neil Youngみたいなイメージで」というリクエストに見事に応えてくれた}

この曲を3月に歌ってもらえたたらいいなぁ。「みんなのうた」になればいいなって。
歌詞を書く上で、明確な答えを出さないで、いろんな人がいろんな捉え方をできる言葉を置こうと考えてます。特に、ネガティブなことなんかは、聞き手のイメージを限定するので気をつけてます。

▼KIDS
{シングアロング必至、最新型の名曲}

「死んでしまう」って言葉を入れたのは、イースタン・ユースや森田童子の影響。僕が死んだら、好きな人にそっと忘れてほしい。「どうせいつかまた会えるよ」っていうメッセージを込めました。
小学三年のときかな、地震の映画の中で地下鉄に水が入ってきて人がいっぱい死んじゃうのを観て、父ちゃんと母ちゃんの布団の中に入りに行ったほどの、ものすごい恐怖感に襲われて。多分それが死を意識した初めての体験。そのとき泣いていた子供の自分に向かって「大丈夫だよ」って歌っているの。
でも今はもうそんなに死ぬの怖くないです。毎日が卒業式のつもりで生きているから。明日が絶対にくるなんて思ってないもん、僕。前向きな意味で。
二胡(中国の伝統楽器)は「パイカル」の吉田悠樹。サックスは「俺はこんなもんじゃない」と「タラチネ」のあだち麗三郎。
あだちくんは自分が今まで出会った人物の中で、限りなく天才に近い人。たたずまいだけでまるで神様。

▼クラッシュ
{高揚感のあるドライブは、ライブでも一番盛り上がる曲}

タイトルはもちろん今は亡きJoe StrummerのTHE CLASHから。TelevisionとThe
Libertinesが交通事故を起こしたら日本人になってた、みたいな。それぐらいアイディアを詰め込んでる。ちなみに「とても不安になったから」と「大音量で流すの
さ」の間に入る言葉は「MINOR THREAT」(FUGAZIのイアン・マッケイがひきいたアメリカのパンクバンド)。本当は、エレファント・カシマシって言いたかったんだけど、うまくはまらなかったんです。今年1月『KIDS』とともに両A面シングルとして発売され、タワーレコード新宿店のその週のインディーチャート2位を記録した。フジテレビ『めざにゅ~』で大好きな松尾翠アナウンサーにバンド名を読み上げられ、朝の4時半に部屋で奇声を発しました。

▼new song
{クラッシュのような激しい曲だけでなく、聴かせるバラードやメロウなミディアムの曲も良いのがおとぎ話の魅力だ}

前越くんが加入して最初にできた曲だから『new song』。新しい門出を祝うにふさわしい名曲ができました。多分、初期のWeezerを意識して作ったはず。いつも他のメンバー3人が、いい意味で裏切るような仕上げをしてくれるから、僕は曲が書けるんだ。
なるべく結婚式で歌えるような曲にしたい。人を嫌な気分にさせる言葉なんか入れたくない。そんなの簡単だもん。今はリスナーを輝かせるほうがよっぽどパンクだよ。履き違えている若者が多いと思う。

▼Blank pop!!!! (空白の時代を塗り潰せ!)
[!はバンドメンバーの数だという。新世紀にロックを鳴らす若者による、確信に満ちた高らかな宣言だ}
「空白の時代を塗り潰せ!」って、特に考えたわけじゃないんだけど、『アテなし』が始まるまでの曲間と考えてもらっていいですよ。完成するまでに長い時間がかかったからすごい達成感があった。ようやく出来たって。
「「続ける」ってなんて素敵 「続ける」ってなんて大変」って歌詞は、同世代のミュージャンだけでなく、今回のエンジニアの岩田さんからも褒められて嬉しかった。僕はFlaming Lipsの歌詞を知らないで聴き続けてたんですけど、「Flaming Lipsも、続けるってことを歌っているんだよ」と言われて、自分のやってきたことは間違ってないって嬉しかった。

▼アテなし
{レコーディングの一番最後に一発録り。打ち上げ花火のようなガレージサウンドが大爆発する}
僕の中の壊れた音楽。いろんな音楽が好きだし、こういう曲は20も30も作れるけど、もうやらないと思う。おとぎ話はこんな面もあるんだよっていうのを見せたかっただけ。だからボーナストラック扱い。おバカなロックファンにはわかってもらえると思う。僕もその中のひとりだけど(笑)。

「ポップの端っこにいながら、ロックのど真ん中」を目指して。それがおとぎ話の音楽。

 

★当時まだ白夜書房の社員で「みうらじゅんマガジン」の編集長だった樋口毅宏さんから、おとぎ話を好きなんで、応援したいと連絡いただいて、インタビューをやっていただきました。その後、『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビューなさって、『タモリ論』、『さよなら小沢健二』など読むべき本を出版されています。

 

 

LIVE情報
2017年11月17日(金)「SALE!」レコ発ツアー・ファイナル10周年記念スペシャルGIG
出演:おとぎ話
スペシャル・ゲスト:前野健太
会場: 下北沢CLUB Que

開場18:30 / 開演19:00
当日¥4,000(D別)

03-5433-2500(15:00~22:00)
http://www.ukproject.com/que/

 

 

12月30日(土)おとぎ話アルバムリリース10周年記念GIG<10YEARS CARAT TOUR>
東京 新代田FEVER (TEL:03-6304-7899)
開場17:30/開演18:00
出演:おとぎ話
チケット:11月25日(土)発売開始!!!!
前売り3,500円/当日4,000円(税込み・ドリンク代別)
プレイガイド:ローソンチケット、チケットぴあ、e+
問合わせ:
FEVER(TEL:03-6304-7899)

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