“次から次にイージーなデビューを果たすインディー・シーンからついに大本命の登場。ひっそりと本当にひっそりとあらわれた三多摩ミュージックの末裔。
アポジーズ 。未だほとんどの人が知らないであろうこのバンドの新鮮な魅力を遂に伝える日が来たようだ。客観的なデータは幾つも羅列できるがー
20代中盤の男子三人(Vo&G、Vo&B、Keyの3人)バンドで下北沢で淡々と地味に、たまーにライヴをやっていた、XTCやビートルズやプログレが好きでひねったポップセンスを好む、メインにヴォーカルをとる2人は対照的なキャラクターでそれぞれに曲を作り詞も書いている…ー
こんな説明ではまたぞろあらわれた下北なポップなバンドであって彼等の本質ではない。それでは彼等の本質とは一体何なのか?
彼等の魅力の源泉の一つになっているのは生活ベースを含めた東京は三多摩地区のノリである。そこは古くはRCやスライダース、最近ではゆらゆら帝国やロッキンタイムを生み出している土地で、特有の共通項として音楽に対する純でオーソドックスな愛情と、それを自分のものにしたいという健康的な欲求を持っているということだ。
この共通項は恐らく三多摩地区の環境的要因、ムードであり本人たちが意識してようがしてまいが、何らかの遺伝子的プログラムをその地以外に住むものに感じさせるものであり、ブリストル、マンチェスター、シアトルという時にその場所固有の音楽性を想像するのに似ている。歌詞とメロディーとリズムが同時に鳴り響く時に個々人の世界観を表すということ。日本語のもつ詩情とビートの関係を意識すること、それは健全なコミュニケーションの手段だということ、そういうポップ・ミュージックの原則を当然のように身につけているのが(なぜか)三多摩らしいノリであり、アポジーズ であって、それは才能が有るということの一つのパターンである。
しかも彼等は若く、あくまで90年代末期に登場したバンドだということを忘れてはいけない。つまり過去の音楽に対するDJ的な知識とリスペクト、サンプリング・センス、そして飄々としたメンバーのたたずまいは世界における現在のポップの基本姿勢である。
そんな若者達が日本のポップスにおける才能の正統性をも持って青春をへらへら歌っているのだからキラキラしないはずはない。本年度再注目なニューバンドである。”