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【UKP OFFICIAL INTERVIEW】 TOTALFAT『夏のトカゲ』リリースインタビュー(前編)
TOTALFATが7/30にニューシングル『夏のトカゲ』を緊急リリースする。今回リリースに至った経緯、バンドを取り巻く現在の状況。メンバー4人がそれぞれ包み隠すことなく語ってくれた。それに伴い、テキスト量も当初の予定を超えてしまい、7/23(水)に前編、そして『夏のトカゲ』発売日である7/30(水)に後編と2回に分けてお届けすることとなりました。是非ご覧ください![取材・文・写真 / 濱田和人(UKP)]
–:今ツアー真っ只中ということですが、今中盤くらいなんですかね?
Shun(Ba.Vo):対バンツアーがもう後半で、それから夏フェスを挟んで9月からのワンマンツアーって感じです。なので全体的に言うと折り返してるかなーってくらいです。
–:各地の反応はいかがですか?
Shun:過去最高じゃないですかね、動員も盛り上がりも。バンドのテンション、ライブのテンションも今までで一番高いっていうか。一本一本のライブに向かうまでの過程も「こういう風にしてみよう、今日はこういう曲の並びでやってみよう。」って細かく取り組んで。終わった後、別に反省会をするつもりじゃないんですけど、やっぱり振り返った時に「あそこはもっとこうした方がいい」とか話し合いもあって。モチベーションの高さがあるなって。
–:それは今までのツアーとは違う部分だったりするんですか?
Shun:今までのツアーに足りなかったとは思わないんですけど…。UK.PROJECTに移籍してから、今年のツアーは担当の千田さん(UKP / RX-RECORDSプロデューサー)の尽力もあって今まで出演したことのないイベントとかにも出られるようになったりとか、あとライブの面で試行錯誤してる時もポロっと「パーティスイッチ入れちゃえばいいんじゃない?」とかそういう風に言ってくれて気持ちがシンプルになったりとかはしましたね。今まで以上にライブっていうものをどうやっていくべきかっていうのは間違いなくUKPに来てから深く考えるようになりました。それまでは結構「気合」とかそういう部分が先に出ちゃったりとか、お客さんとの距離感っていうのを縮められないままだったりとか多かったんですけど、今年に入ってからは割と完璧ではないけど、そういう部分がうまくいったりするとライブも楽しくなってきたりして、そうするとこの日のライブを踏まえて、次どうする?みたいな欲が生まれたりしてて、その度合いが大きくなってきてます。
–:なるほど。Joseさんはいかがですか?
Jose:UKP入ってからライブの本数が増えたんですよね。それから一本一本を大事にしようって考え方がバンド全体に生まれてきてて、良いライブできたらちゃんと嬉しいし、そうじゃなかった時はしっかり悔しいし、すごく純粋になってきている気がします。それは自分らがライブっていうものに対して、ちゃんと気合いれて演奏するってシンプルな答えが一つ出せているっていうか。そういう意味では昔のライブやる楽しさっていうのから次のステップに進めているような気がしていて。もっと一生懸命楽しむようになったっていうのかな。
–:ライブに楽しさのバイヴスが生まれてますよね。バンドはもちろん、お客さんのレスポンスにもそういうものを感じます。
Shun:UKPに来て一年ちょっと経って、明らかにバンドの状態が良くなったんですよね。バンドを取り巻く環境もそうだし、動員もしっかり増えてきているし、でもそれ以上にステージに立つ4人の音楽に対する姿勢とか、ライブっていうものに対する意識の向け方がすごい仕上がってきてるっていうか。そういう意味での状態の良さは感じてて、だからこそぶつかるときもあるし。でもそのバイヴスがまず4人の中でしっかり高いところに持ち上げることができてて、それがライブの時に表に出せてる実感があるんですよ。今までのツアーの中で一番手応えがあります。
–:Kubotyさんはどうですか?
Kuboty:ツアーもありますけど、ツアー中に出るイベントがすごい増えてきたんで、結構自分は元々出られるライブはなるべく出るってタイプだったので、ライブに出ればやっぱり消耗もあるんですけど、逆にそれを消耗と考えないで、すべてのライブで勝っていくっていう、そういうストロングスタイルで今やっていけてるのがすごい楽しいすね。実際ライブだけは他のバンドに負けないように全部ぶっ倒していく感じでやれてるから、すごくいいと思いますよ。本当何より自分がどうっていうより、実際ツアーに来てくれるお客さんが増えてきてるって部分で、バンドが良くなってきてる実感を感じるので、自分たちの気持ちと動員って部分でもかみ合ってきてるんだと思っています。
–:Buntaさんは?
Bunta:みんなも話してますけど、UKPに入ってから今まで出てなかったようなイベントに出演するようになってなんか考え方が変わったのが、今までは俺たちはメロコアパンクの流れの中に「TOTALFAT」ってジャンルがあって、そういうものを聴いているお客さんにアピールするっていうのが主なやり方というか、もしかしたらそこにしかアピールできてなかったのかも知れないけど。UKPに入ったことで、俺たちが今までアピールできていなかった部分にアピールできる機会が増えたし、それは俺らも意識してモッシュとかダイヴとかしないようなお客さんに対して、俺らのライブの良さを伝えることでファン層を広げていくというか、そういう活動がここきてちょっとずつ形になり始めて、その結果が動員が増えたり、リアルなものになってツアーに反映されてきたって感じですかね。これからもっと今まで俺らの音楽を聴いてこなかった人に対しても、TOTALFATの音楽をどう伝えていくかっていうのが今後のキーポイントになっていくと思うんで、今みたいな活動を続けていけばもっと結果も出せるんじゃないかと思います。
–:アピールのレンジっていうのは間違いなく広がってきていますよね。
Shun:やっとすね(笑)。ホームでしか戦えない時期がすごい長かった気がして、実は。ライブが良いとは言われていたし、かっこいいとか、曲がいいとか、盛り上がるとかってずっと言われてきたけど、結局俺らがそれを見せて、いいねって言われてるのがずーっとホームでばっかりだったんです。結局メロコアっていうベーシックのシーンがあって、それが好きで集まってるお客さんの前で披露して、横綱相撲取って、盛り上がるのが当たり前って状況で。お客さんの盛り上がりを見て自分たちがアガるっていう。それはそれで楽しいし、最高なんだけど、なんか…、それだけでいいの?っていう所にいた時期が長くて。
–:ジレンマを抱えててたってことですか?
Shun:それすらもなかったって感じです(苦笑)。これでいいやって思っちゃってた。
–:その枠の中に入っちゃってた。
Shun:でもそれって結局、外に出る自信がなかったというか。例えば全く違うジャンルのイベントに誘われた時に、盛り上がらなさそうだし、全然アウェーだから出なくてよくね?みたいな。ここに出て俺ら得るものありますか?みたいな考えになっちゃってたこと自体が問題だったのかなって。
Jose:その時はそうだったんだと思う。
Shun:そのマインドが切り替わっていくタイミングと、バンドがビルドアップされていくタイミングが合致してきたから俺はすごいよかったなって思ってる。でもバンドがもっと上行くためにはどこかで変わんなきゃいけない。そのタイミングがUKPに移籍するすごいタイミングと重なってて。個人的には二ついい転機があって、一つ目はUKFCに初めて出演した時。ぶっちゃけ最初はレーベルカラーというか、そういうものを気にしていて、ちょっと背伸びして下北にカリフォルニアの風を吹かすとかって言ったものの、UKFC当日まではどうなるかなーって不安で、でもいざ出演した時にすごい盛り上がったし、お客さんのウェルカム感と、結局変わんねえじゃねえかよって(笑)。いい意味で。TOTALFATはTOTALFATのままでいいんだなって思えたのがその日だった。もう一つの転機はSPYAIRとの対バンで勉強できたことがとても大きくて…。あそこまでティーンの心に響いて、届いているバンドと共演した時、お客さんもすごい受け入れてくれたし、今だったらTOTALFATもっと外に広げていって全然いいじゃんって思えたんですよね。そこで考え方とか、ライブをこうしたい、こう見せようってステージに立った時の視野と角度が広がったなってイメージがあるんですよね。
Bunta:あとね、最近解ったことっていうか…。下北にカリフォルニアの風吹かせようぜって俺らが言ってたんだけど、この前難波さん(難波章浩[NAMBA69/Hi-STANDARD])に会った時に「Hi-STANDARD組んだの下北の屋根裏なんだよね。」って。
一同:(笑)。
Bunta:そもそも下北にカリフォルニアの風吹いてんじゃんってその時思った(笑)。「じゃあ俺ら下北きて正解だったんすね。」みたいな(笑)。
–:ちょっとお話戻るんですけど、バンドのアピールレンジが広がってきているとありましたが、今様々なフェスだったりとかイベントにおいてトリだったり、重要な位置にポジションすることが多くなってきているじゃないですか。その辺りってどのように感じていますか?
Bunta:バンドの立ち位置もそうだと思うんですけど、TOTALFATだけじゃなくて例えば[Alexandros]やBIGMAMAもそうだと思うし、the telephonesがこの前”VIVA LA ROCK”でトリ務めたりとか、俺らだけじゃなくて世代全体がここでトリを任されてちゃんとやり切れるバンドになれるかかどうかの瀬戸際で伸るか反るかっていうか…。その中でふるいにかけられるんじゃないかと思っていて。ロックバンドとして。
–:重要なポジションを任される喜びというよりは、責任感もありつつ、割とシリアスな目線なんですね。
Shun:おれは逆に責任感は一切感じずに「やっと来たか。」みたいな(笑)。もちろん掴み取ったっていう自信もあるし、「いやまだ早いでしょう。」とは思わず、今年トリやりたいって思ってたし、そういう所で任せてもらえるっていうのはアガる要素の一つっていうか。この前の”SATANIC CARNIVAL”の時に感じたのは「トリのTOTALFAT」を観に来るっていうことの価値をお客さんが見出してくれてるなって。普段のTOTALFATのライブとはまたお客さんの雰囲気も違うっていうか。
Jose:気合がね。
Shun:気合入ってんなっていうのを感じたから。そこは楽しめたな。
Jose:去年まではずっとトップバッターとかほぼ一番目で、前半の方とかが多かったんですけど。今年に入ってトリっていう立場が増え始めたっていうのは本当嬉しいすね。単純に。でも嬉しくて震える分、ちゃんと引き締めて演奏するっていう。気合も入るし。
Shun:the telephonesが”VIVA LA ROCK”でトリやって、当日ずっとあいつらライブ始まる前まで一緒にいて、メンバーのアガりっぷりと気合と緊張と…。で、ステージにバーッと出て行ったとき横から景色を覗いてて、あいつらもめちゃくちゃ良いライブしてて、夢見せてくれたんですよね、the telephonesが。トリってかっこいいなって。
Bunta:the telephonesとは特にね、2、3年前のフェスとかで、お互いやっとメインステージに出たりする機会が増えてきて、この頃はまだ前半とかに出てたんですけど。いつかあの先輩達越えて、その後ろの時間でやりてえって話を”TREASURE”とか”RUSH BALL”の時にしてて、それがちょっとずつ現実になってきて、やっぱりセールスだけじゃないじゃないですか、フェスって。トリを務めることとか大切なポジションに立つってことはバンドの格がなきゃできないことだから。俺らは今すごい自信があるから胸張ってやってるって言えるし、去年だったら「いやーちょっとキツいんじゃないの?」って言ってたかもしれないし、この自分たちの今の自信とバンドの状態と実際にトリが出来るタイミングっていうのがマッチしてるから、いいタイミングだなって思えるというか。
Shun:あとBuntaの言う「格」と、もう一つトリを務めるために絶対必要なのが「ストーリー」だと俺は思ってて。今年2014年で言ったら” ROCK IN JAPAN FESTIVAL”でトリをやるってことはすごく、俺らにとってのストーリーがあるし。
Bunta:周りのスタッフも含めて、色んな力が働いて決定するわけだから。
Shun:人間も見てくれてると思うしね。
Bunta:そういうストーリーと関係性が大事だよね。
Shun:”SATANIC CARNIVAL”にせよ”RIJF”にせよ、メインステージに強大なバンドが居ながらのトリっていうのはね、番狂わせを期待されてるのかなっていうのも少しは感じてて。
–:先程、Kubotyさんがおっしゃっていた「勝ちに行く」っていう部分も必要になってきますよね。
Bunta:最近みんなで話してるのは、フェスに出られたから嬉しいとかじゃなくて、一本でもしょっぱいライブしたらマイナスプロモーションになると思ってて。やっぱりお客さんの取り合いだし戦場だから。お客さんからしたら色んなバンドがいて、新しい音楽が聴けて、観たことないライブが巻き起こってて。それをたくさん観た中で何が一番良かったかっていうのは、想定外のことが起こった時だと思うんすよね、だから俺たちのこと知ってるお客さんに対しても想像以上のものを与えないとダメだし、新しく観てくれるお客さんに対してもちゃんと良いものを見せないとダメだし。そこで下手したらお客さん減っちゃうと思うし。それくらいリアルな戦場とまでは言わないけど、でも実際そうなってきてると思うし。フェス自体も多いわけだし。それこそ毎回勝ちにいかないと意味ないし。バンドを続けていくには、そこが一番ポイントになってきてると思いましたね。
–:今年のUKFCも控えてますもんね。ジャンケン勝ちましたし(笑)。(※UKFC最終日新木場STUDIO COAST公演のトリは毎年ジャンケンによって決定される。)
Shun:下北沢の神様が降りてきましたよね。
Kuboty:あの出来レースのやつな。
一同:(爆笑)。
Shun:こらこらこらこら(笑)。
Kuboty:まあこれはやらせとかじゃないと思ってるんですけどちょっと言わせてください。石毛とShunが決勝したよね?
Shun:うん。
Kuboty:あれはねShunが勝つと思ってましたよ。
Jose:俺はその時安井君(BIGMAMA.Ba)と飲んでて、毎回大トリはドラマがあるって聞いてたんすよ。ジャンケンの時に安井君とふたりで「これ俺らっぽくね?」って言ってて。
Kuboty:てかそういう風が吹いてたんだよ。
Shun:遠藤さん(UKP社長)も配信始まる前に言ってたらしいじゃん「これTOTALFATじゃね?」って。
Kuboty:遠藤さんはそりゃ台本見てるんだもん。
Shun:おいっ!(笑)。
一同:(爆笑)。
Kuboty:俺らは台本見てないけど感じてたよ。台本見てないけど(笑)。なんかさ石毛が勝ったら面白くないじゃん? the telephonesもさ言うたら俺らより先行ってて。スーパーアリーナもやってるし、同世代だけど一歩二歩先を行ってるバンドで、まあすぐ追い越すんだけど俺らは。そこをね、石毛に対してShunがもし仮に負けちゃったら、なんとなく雰囲気的にもう一年振り出しに戻るぞみたいなさ。
Shun:結局TOTALFATまだまだだなって。
Kuboty:っていうのを心から拒んでいたんだと思う。そういうものが魂に乗り、風にも乗り、導かれたトリという出番ね。
Shun:絶対やりたいって思ったもんな。ジャンケンの時。
Kuboty:誰よりもその意志は俺たち四人が強かったんだと思う。ここでやらなきゃいつやんだって話になるから。
Shun:去年出た時、出番直後のSPACE SHOWER TV収録の時に「初めてのUKFCはどうですか?」って質問されて、「いやー最高っす、でもまだまだビギナーでニューフェイス枠だから、来年はレギュラーメンバーとしてトリを狙っていきたい。」ってことを言ったのを俺鮮明に覚えてて、今回有言実行出来る喜びっていうのを感じてますね、嬉しいなって。
–:一つ一つ目標をクリアしていってる感覚って大事ですよね。
Shun:そうですね。それがなくなったら多分上に上がれなくなっちゃうと思うし。
Kuboty:誰よりも良いライブを当然の如くしないとね。
Shun:去年BIGMAMA無茶苦茶よかったからね。
Jose:乱入しちゃったからねえ。その時も北島さん(UKP副社長)が物販に走って行って、持ってきたタオルの袋破いて「Jose君Jose君これ持って出て行って!」って(笑)。
Bunta:あったねえ。タオルもってみんなで出ていってたね。
Shun:今年はさあ全員で切れっ切れのタンクトップで出てきて、タオル回してね(笑)。
一同:(笑)。
–:夏が楽しみですね。今年は今年のUKFCのストーリーがあると思いますし。初日の7/15(取材日は7/1)がもうすぐですね。
Shun:なんなんすかねこの安定感ね、面子というか。別にこの面子だからお客さん入るから大丈夫とかじゃなくて、こいつらと一緒なら絶対にいいライブ出来るなっていう、謎の精神的支えがあって。それがすごい大好きなんですよね。
–:今の言葉ってUKFCを体現してるなって思いますよ。FCの部分って「ファミリーカンファレンス」って意味なんですよ。
Kuboty:ファミリーコンピューター。
Shun:カンファレンスね(笑)。
–:家族会議みたいな意味合いもあって。
Kuboty:アンノウン家族会議ね。
Shun:知られざる家族会議(笑)。
–:この一年でTOTALFATにUK.PROJECTの一員っていう部分での違和感みたいなものってなくなりましたよね。
Bunta:確かに。世代感もあるしね。POLYSICSやLOST IN TIMEっていう先輩もいるけど、俺らの世代もガシガシきてると思うし。それぞれのシーンがちゃんとあっていいよね…。
–:UKFCってそういった部分ってとても顕著に表れてますよね。同じ畑の人がいないというか。
Bunta:新しい風吹かせて若手のメロコアバンドをもうひとバンドくらいUKに…(笑)。
Jose:TOTALFATがいるUKPに入りたいってデモテープを送ってくれるとか、そういう風にちょっとずつでもなったらいいなって思えるようになってきた。最初はUKPにどきどきしてましたけど。
Bunta:カリフォルニアの風ももう吹いてたことだしね(笑)。
Shun:いつまでも末っ子気分じゃいられないよね。
Jose:うん。
Shun:オーディションで優勝したバンドも入ってくるし。一回ここでトリやって、UK.PROJECT内でもTOTALFATいいねって言ってもらえるよう/になりたい。自身の気の持ち方も。今回のUKFCはそれのいい確認の場になるかなって思っています。
後編はこちら
TOTALFAT
New Single「夏のトカゲ」
2014.7.30 Release
KSCL-2399 ¥926+税
<収録曲>
1.夏のトカゲ
2.Save Your Days