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【UKP OFFICIAL LIVE REPORT】UKFC on the Road 2017《FUTURE STAGE》@新木場STUDIO COAST

Helsinki Lambda Club

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2017年のUKFC 、FUTURE STAGEのトップバッターを飾るのは、昨年GATE STAGEのトリを務めたHelsinki Lambda Club(ヘルシンキ ラムダ クラブ)。昨年まではサポートメンバーだったギターの熊谷太起が今年の4月に正式加入し、新体制でUKFCに臨む。近年はインディシーンにおける新たなガレージロック/パンクの流れが盛り上がりを見せていて、中でもオルタナやパワーポップといった90年代的な要素を持ったバンドが目立ってきているが、Helsinki Lambda Clubはその先駆けのようなバンドだったと言ってもいいだろう。自主レーベル「Hamsterdam Records」も立ち上げた今、さらなる爆発が期待される。

The Stone Rosesの“Your Star Will Shine”をSEにメンバーがステージに姿を現すと、まずは“Skin”からライブがスタート。〈スキンして?あとは好きにして?〉という名フレーズと、強烈にキャッチーなメロディー、軽快なアンサンブルの組み合わせはまさに彼らの真骨頂だ。コーラスとひねくれたキメが持ち味のパーティーチューン“ユアンと踊れ”、さらには6月に発表されたtetoとのスプリットから、サーフロックやダブのテイストを併せ持ち、彼らがストレンジポップの系譜に連なることを示す“King Of The White Chip”と、序盤は矢継ぎ早に楽曲を畳み掛けて行く。

彼らの熱いんだけどどこか飄々としていて、ユーモラスでもあるステージの鍵を握るのは、やはり長髪を振り乱して奇妙なパフォーマンスを見せるベーシスト・稲葉航大だろう。サイケデリックな“メサイアのビーチ”の間奏では、熊谷がギターをバーストさせ、ドラムのアベヨウスケがパワフルなリズムを叩き出す一方で、稲葉は不可思議な動きでベースを刻み、そこで生まれるある種の違和感も、彼らの大きな魅力と言えるかもしれない。

ここでボーカルの橋本薫が11月に新作をリリースすることを発表。「先にお祝いしてもらってもいいですか?」という問いかけに、オーディエンスから「おめでとう!」と声が返ってくると、ご機嫌なリフものの“Lost in the Supermarket”でこの日初めて会場中がクラップに包まれた。トップバッターからして、いい雰囲気だ。

橋本が「Helsinki Lambda Club、いいバンドですね」と自画自賛した後、「今日は自分の感性を信じて、好きなバンドを見つけていってください」と話すと、再びサイケデリックな轟音を響かせてから、“This is a pen.”へ。The Beach Boysばりの涼しげなコーラスが雨まじりの天気に夏の空気を連れてくると、ラストはこちらもスプリットに収録されていた“宵山ミラーボール”!UK.PROJECTの先輩にあたるthe telephonesに負けずとも劣らないエネルギッシュなガレージロックをかき鳴らし、25分のステージをあっという間に駆け抜けて行った。次世代の顔役へ向けて、このバンドはまだまだ面白くなりそうだ。

 

【SET LIST】
01. Skin
02. ユアンと踊れ
03. King Of The White Chip
04. メサイアのビーチ
05. Lost in the Supermarket
06. This is a pen.
07. 宵山ミラーボール

 

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[text:金子厚武/photo:ヤマダマサヒロ]

 

▽Helsinki Lambda Club official site:http://www.helsinkilambdaclub.com/home

 

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昨年はDATSのメンバーとしてFUTURE STAGEに立っていたギタリスト・早川知輝が加入し、6人体制では初のUKFC出演となるodol。9月に発表される新作EP『視線』のリリースを前に先行配信された一年ぶりの新曲“GREEN”はバンドの進化を明確に示すものだったが、その真価やいかに?

「odolです。よろしくお願いします」という挨拶から、一曲目に披露されたのは『視線』に収録されている新曲“狭い部屋”。ミゾベリョウの歌と森山公稀のエレピのみで始まり、徐々にバンドが加わって熱を帯びていくというダウンテンポかつサイケデリックなナンバーで、バンドの現在地を示す。続く“君は、笑う”はセルフタイトルのデビュー作収録のナンバーだが、ドラムのループを基調とした新たなアレンジに生まれ変わっていて、やはり6人ならではの重層的なアンサンブルを聴かせる。“逃げてしまおう”は、森山のピアノを軸としたジャジーな曲調で、その端正な雰囲気とは裏腹に、エモーションを込めたミゾベの生々しいボーカリゼーションが印象的だ。

森山が大勢のオーディエンスに感謝の言葉を伝え、「6人体制初の出演、新たな気持ちで迎えました」と挨拶をすると、新作の話をして、リードトラックの“GREEN”へ。ゆったりとしたミゾベの歌と森山のピアノの隣で、アブストラクトなノイズギターがフリーキーに鳴らされ、エレクトロニックミュージックからの影響を感じさせる細やかなビートが重なる。さらに間奏ではストリングスも加わって、楽曲のドラマ性がより上昇していく。やはり、明確な新機軸であり、odolが新章に突入したことを伝える一曲だ。

個人的に前から思っていることなのだが、odolからはRadioheadに通じる雰囲気が感じられる。それは内省的なムードだったり、オルタナティブなバンドサウンドをベースにしつつも、多様なアレンジが含まれた音楽IQの高さなどが理由だったが、現代音楽、ジャズ、エレクトロニックミュージックなどの要素がこれまで以上に楽曲に反映されるようになってきて、僕の妄想は現実的なものになりつつある。キーパーソンはYMO好きを公言するソングライティング担当の森山で、いわば彼がodolのジョニー・グリーンウッド(パートは違うけど)。そして、UK.PROJECTから3枚目のリリースとなる『視線』は、彼らにとっての『OK COMPUTER』と言えるか。世の中をガラッと変えるとは言わないまでも、バンドにとってはそれくらい大事な意味を持つ作品になりそうだ。

最後に演奏されたのは、デビュー作に収録されている名曲“生活”。SGをかき鳴らすミゾベの姿は、トム・ヨークを連想させるものだった。自らの原点をもう一度踏みしめて、彼らは異次元の領域へと突入して行く。その視線の先は、もちろん未来。

 

【SET LIST】
01. 狭い部屋
02. 君は、笑う(2017)
03. 逃げてしまおう
04. GREEN
05. 生活

 

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[text:金子厚武/photo:ヤマダマサヒロ]

 

▽odol official site:http://odol.jpn.com/

 

PELICAN FANCLUB

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共同企画「凄い日」を開催するなど、縁の深いodolの後を受ける形で、PELICAN FANCLUBがFUTURE STAGEに登場。5月に発表された初のフルアルバム『Home Electronics』のオープニングを飾る“深呼吸”でライブをスタートさせた。「風が吹いている大草原で一人深呼吸をしているイメージで歌詞を書いた」という曲だけあって、解放感のある曲調が大きな会場によく似合う。ベースのカミヤマリョウタツはイントロからステージ前方に出て、派手なパフォーマンスで勢いよくオーディエンスを煽っていく。

続いて演奏されたのは疾走感のあるロックナンバー“Night Diver”。エッジの効いたソリッドなギターサウンドを鳴らしつつ、抜けのいいサビのポップなメロディーや、間奏での合唱コーラスなどからは、現在の開かれたバンドの雰囲気が伝わってくる。さらには、4つ打ちで繋いでそのままシームレスに“許されない冗談”へ。間奏では下手の奥に位置するギタリストのクルマダヤスフミもステージ前方に出ていって、上手に位置するドラムのシミズヒロフミも含めたメンバー4人全員で、ラウドな轟音を全力で叩き付ける。

これまでのPELICAN FANCLUBはステージ上での演劇的な表現を大事にしてきたが、リリースやライブを重ねることによって、ファンとのつながりを意識するようになり、『Home Electronics』ではステージとフロアで共有できるような楽曲を目指したと語っている。それがどこまで実現できているのかは、今後のライブ次第という部分もあると思うのだが、少なくともその意識は既発曲の演奏にいい影響を与え、それが伝わってきたのが旧作から演奏された後半の2曲だった。

エンドウアンリが「今日の寝る前とか、お風呂で頭を洗ってるときに、この瞬間を思い出してほしい」と語りかけ、ポップなコーラスが印象的なダンスナンバー“Dali”でフロアが揺れ、間奏ではクラップも巻き起こる。さらに「一生に一度しかないこの日を楽しみましょう!」と呼びかけて、ラストに披露されたのは昨年発表の前作『OK BALLADE』に収録されていた“記憶について”。「誰もが感じることを曲にした」というこの曲は、『Home Electronics』の制作を経て、本当の意味でステージとフロアをフラットにする曲になったのではないだろうか。オーディエンスから贈られる拍手を背に、やり切った表情でステージを後にしたメンバーの姿からは、そんなことが感じられた。

 

【SET LIST】
01. 深呼吸
02. Night Diver
03. 許されない冗談
04. Dali
05. 記憶について

 

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[text:金子厚武/photo:河本悠貴]

 

▽PELICAN FANCLUB official site:http://pelicanfanclub.com/

 

ウソツキ

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さまざまなタイプのエイリアンが生息するここ「惑星SHINKIBA」のFUTURE STAGEに、昨年に引き続いてウソツキの4人が降り立った。一曲目を飾ったのはタイトなアンサンブルでグルーヴを生み出す“夢のレシピ”で、〈さぁ始めようか You 君の最初の一歩〉という歌詞がライブのオープニングにぴったり。藤井浩太のスウィープを駆使したベースの速弾き、吉田健二のエネルギッシュなギターソロ、中盤のコール&レスポンスと最初から見せ場もたっぷりで、ライブ巧者ぶりを印象づける。

ボーカルの竹田昌和がハンドマイクに持ち替え、ドラムの林山拓斗がバスドラを踏み出すも、ここで機材トラブルが起き、一瞬ライブは中断。しかし、気を取り直してポーズを決めると、ディスコティックな曲調に合わせてサイドステップを踏む“コンプクレクスにキスをして”へ。自分をさらけ出すことでオーディエンスと繋がろうとする歌詞は、今の竹田のモードを良く表している。また、海外のメインストリームを意識し、時流のファンキーなアレンジを取り入れつつも、あくまでウソツキらしく、ちょっとのダサさもあえて加えて、大衆性のあるポップスに消化する姿勢にぶれはなし。最新作『惑星TOKYO』における曲調の広がりが、ライブの幅にもちゃんと繋がっている。

「僕らなりのダンスナンバーを作ってきました。ここにいるみんなで一緒にやってください」と呼びかけて披露されたお馴染みの“旗揚げ運動”では、「右手!左手!両手!」という吉田のかけ声に合わせてオーディエンスの両腕が上がり、会場が温かな空気に包まれる。さらに竹田が「全然人と上手くしゃべれない僕を家族と呼んでくれたUK.PROJECTを真似して言います。今日僕らを選んでくれたみなさんは僕らの家族です。愛を込めて」と伝え、“一生分のラブレター”を情感たっぷりに披露。その真っすぐな歌声は、確かにオーディエンスに届いていたように思う。

吉田がギターを使って巧みに汽笛の音を鳴らすと、「汽笛の音が聴こえてきてしまったので、ウソツキはこれで帰ります。ありがとうございました」と再度オーディエンスに感謝を伝え、最後はもちろん“新木場発、銀河鉄道”。〈さようならまた 逢いましょう 気をつけてどうか気をつけて〉と歌い、4人は「惑星SHINKIBA」を後にした。孤独なエイリアンたちは「一人じゃない」なんてウソを一瞬信じ、また一人一人の生活へと戻って行く。ほんの少しの勇気と、軽やかなハートを胸に。

 

【SET LIST】
01. 夢のレシピ
02. コンプレクスにキスをして
03. 旗揚げ運動
04. 一生分のラブレター
05. 新木場発、銀河鉄道

 

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[text:金子厚武/photo:河本悠貴]

 

▽ウソツキ official site:http://usotsukida.com/

 

フレンズ

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下北沢を本拠地とするUK.PROJECTのイベントに、「神泉系バンド」フレンズが乗り込んできた!とはいうものの、下北沢と神泉は同じ井の頭線仲間。そして何より、かつてthe telephonesのメンバーとしてUKFCをさんざん盛り上げまくってきた長島涼平が新たなバンドでこの会場に戻ってくるというのは、イベントに長く関わっている身として、なかなかに感慨深いものがある。

サニー・ジェイの“Can’t Stop Moving”に乗ってメンバーが姿を現すと、一曲目は最新作『ベビー誕生!』のオープニングに収録されている“ビビビ”。ブラックミュージックのフィーリングを感じさせるJ-POPを影響源に、それぞれがバンドシーンでキャリアを積んできたメンバーによって鳴らされる楽曲は快楽のツボを心得たもので、ポップ職人としての腕前を感じさせるもの。初期からの人気曲“夜にダンス”ではボーカル/キーボードのひろせひろせがステージ前方に出てきて、おかもとえみのにぎやかなパフォーマンスも合間ってオーディエンスを大いに盛り上げた。

おかもとが「今日はゲストバンドとしてきたんですけど、蝶ネクタイの人が…」と長島を紹介すると、思わず「ディスコ!」の第一声。「僕的には里帰りのつもりなんですけど、おかえりって言ってくれる人が全然いなくて…でも、POLYSICSのヤノさんだけおかえりって言ってくれました」と楽屋ネタを披露したのに続いて、「でも、今日はフレンズで楽しんでもらいたいと思います!」と、最新曲“夏のSAYにしてゴメンネ♡”へ。ひろせのラップをフィーチャーしたアゲアゲなチューンは、J-POPの歴史で言うとORANGE RANGEを先生とし、端正なポップスに落とし込んだという感じか。

「もっともっとなかよくなりたい!」と振り付けを練習してから始まったのはディスコティックなパーティーチューン“塩と砂糖”。フェス慣れしている最近のお客さんは振り付けの飲み込みが早く、みんなで一緒に踊ると、ギターの三浦太郎のボーカルをフィーチャーするシーンもあり、フロアはさらに大盛り上がり。「物販担当大臣」の三浦による会場限定CDの告知を挟んで、UK.PROJECTのボスに向けた「遠藤さん、マジで、ありがとう!」のコール&レスポンスを決めると、ラストはこちらも初期からの人気曲“Love,ya!”を披露。とことんハッピーなパーティー空間を作り上げると、何と最後には石毛輝と岡本伸明が飛び入り!ひさびさのフレンズ共演の瞬間となった。

 

【SET LIST】
01. ビビビ
02. 夜にダンス
03. 夏のSAYにしてゴメンネ♡
04. 塩と砂糖
05. Love,ya!

 

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[text:金子厚武/photo:ヤマダマサヒロ]

 

▽フレンズ official site:http://friends-jpn.com/

 

lovefilm

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今年の春、江夏詩織のライブ出演キャンセルが発表されたのは4月20日。あれから4ヶ月のときを経て、江夏にとってはこの日がひさびさの復帰ライブとなる。当初出演予定だった「VIVA LA ROCK」をはじめとする数本のライブは、石毛輝と岡本伸明がサポートの福田洋子と共に3ピースでパンクバンドのようなステージを披露。その後、石毛はソロ活動をスタートさせ、つい先日新バンドYap!!!の始動を発表し、岡本もまたスペシャルバンドSMTMでライブを行うなど、それぞれの活動を展開してきた。lovefilmの存在意義を再確認する意味でも、この日は重要なライブと言える。

イルミネーションが光るステージにメンバーが登場すると、江夏の「lovefilmです」という一言から、5月に発表された最新シングル“Haruka”でライブがスタート。江夏のガーリーな歌声を生かした甘いメロディーと、オルタナ風味のガレージサウンドの組み合わせが、「これぞlovefilm」といった感じの一曲だ。江夏からはやや緊張が伝わるが、石毛はリラックスした雰囲気でギターソロを奏で、岡本は淡々とリズムを刻んで行く。続いて披露されたのも、同じシングルに収録されている“Amamori”。こちらはバンドのメランコリックな側面が表れた一曲で、江夏と石毛の淡々としたツインボーカルがせつなさを深め、一方、中盤で出てくる石毛のハイトーンボイスは楽曲のドラマ性を高めて行く。

石毛が「UKFC楽しんで行きましょう!」と呼びかけると、そのまま石毛がメインボーカルを担当する新曲が披露され、プログラミングによるトランシーなサウンドスケープが会場を包み込む。MCでは江夏が「今年もUKFCに出させていただいてありがとうございます」と感謝を伝えると、石毛が「今日はひさしぶりに4人でやります!」と言い、場内からは大きな拍手が。さらに「UKFCは今年で7年目、みなさんこれからも一緒に音楽を楽しんで行きましょう。僕らの音楽を心に染みて、ラストPOLYSICSで暴れて帰ってください!」と大トリを飾る先輩にエールを贈った。

スケール感のあるサウンドを鳴らす“Kiss”に続いて、ラストに演奏されたのはlovefilmのメランコリーサイドの極点と言うべき“Hours”。4人で演奏できる喜びをかみしめながら一音一音を紡いでいくメンバーと、それを固唾を飲んで見守るオーディエンス。決してFRONTIER STAGEのライブのような大モッシュが起きるわけではないが、歌と演奏に胸がギュッと締め付けられることもまた音楽の醍醐味だ。この日のlovefilmのステージは、そんなことを改めて感じさせるものだった。

 

【SET LIST】
01. Haruka
02. Amamori
03. 新曲
04. Kiss
05. Hours

 

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[text:金子厚武/photo:高田梓]

 

▽lovefilm official site:http://lovefilm.jp/

 

▶︎UKFC on the Road 2016《FRONTIER STAGE》ライブレポート

▶︎UKFC on the Road 2016《GATE STAGE》ライブレポート

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