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【UKP OFFICIAL LIVE REPORT】2018.8.22(wed.) UKFC on the Road 2018@新木場STUDIO COAST FUTURE STAGE
[集合写真撮影:古溪一道]
2018年のFUTURE STAGE、トップバッターを飾るのは4月にファーストミニアルバム『干天の慈雨』をRX-RECORDSから発表した名古屋発・平均年齢20歳の4ピース、postman。2016年にはBIGMAMAが企画した10代限定ライブ「Welcome to BIGMAMA University」の対バン相手に選出され、地元・名古屋で共演を果たすなど、以前からレーベルとの接点はあったが、遂に「UKFC」初登場。また、同年には10代限定の夏フェス「未確認フェスティバル」のファイナリストとして、新木場STUDIO COASTのステージに立った経験もあり、彼らにとっては2年ぶりの凱旋とも言える。
ノエル・ギャラガーの“Fort Knox”をSEに、メンバー一人一人がステージに姿を現すと、オープニングは現在の彼らの代名詞的な一曲“光を探している”。ハイトーンな寺本颯輝のボーカルによる印象的なサビから始まり、いわたんばりんによる「名は体を表す」な跳ねたリズムのAメロでは、岩崎圭汰が派手なアクションでオーディエンスを煽り、早速手拍子が起こる。続いて、荒々しいイントロから疾走感のある“Moongaze”へと繋ぎ、間奏では兼本恵太朗が伸びやかなトーンのギターソロを聴かせた。この日出演する歴戦のバンドたちに比べれば、演奏はまだまだ線が細いし、パフォーマンスもややぎこちない。しかし、不器用ながらも、光を探し、届けようとする、その意志は確かに伝わってくる。
「今年の4月にリリースしたばかりの新参者ですが、お手柔らかに……とは言わないです。全力で楽しみましょう。最後までよろしく」と寺本が告げると、艶のある歌声の弾き語りでオーディエンスを引き込んでから始まったのは、自主盤の『月前の夢.ep』に収録されていた“正夢”。スケール感のある間奏では、すでに彼らのことを良く知るオーディエンスを中心に合唱も起こる。この曲では〈幾千の偶然が運命に 変わったこの奇跡とやらを 僕はずっと信じていたい〉と歌っているが、「BIGMAMAの企画で見つけてもらってから、2年間駆け足でここまで来ました。UKFCはずっと憧れてたけど、ここに立てたのは運とかタイミングじゃなくて、積み上げてきたものなのかな」という寺本の言葉には、現在の自分たちに対する確かな自信が感じられた。
「今歌いたい曲を歌って帰ります」と話し、最後に演奏されたのは新曲の「夢と夢」。夢が正夢になった先で、それでも夢を見続ける覚悟を力強いバンドサウンドで叩き付けると、寺本が「僕は夢をこのステージで歌って行く」と告げ、記念すべき初めてのUKFCのステージを終えた。
<SETLIST>
01. 光を探している
02. Moongaze
03. 正夢
04. 夢と夢
[text:金子厚武 / photo:古溪一道]
FRONTIER STAGEでのPOLYSICSによる「陽」のステージからは一転、FUTURE STAGE2番手として登場したのはpolly。昨年はGATE STAGEでの出演だったが、初のフルアルバムにして、約2年ぶりの流通盤となった力作『Clean Clean Clean』で大幅に更新してみせた現在のバンドの姿を、新木場STUDIO COASTの広い空間で存分に披露してくれた。
SEのミニマルなビートに合わせて一筋の明かりが明滅する中にメンバーが登場し、仄かな光の中で始まったのは、アルバムでも一曲目を飾っている“生活”。深いリバーブのかかった音像と中性的な越雲龍馬の歌声、フォーキーなメロディーの組み合わせによる、このバンドならではの内省的なシューゲイズナンバーが、ここまでのお祭り騒ぎなフロアをキラキラとした美しい闇で塗り替えて行く。少しテンポを上げ、ネオアコ的な軽快さが魅力の“花束”では薄い青に照らされたステージ以外、フロア全体が漆黒で包まれ、まるで深海に沈み込んでしまったような錯覚すら覚える。
「25分しかもらってないんで、やりたいようにやらせていただきます。音楽を25分間鳴らします。よろしくどうぞ」という挨拶に続いて、強烈なフィードバックノイズから始まる新曲を披露。アルバムの曲同様、4ADのアーティストを連想させる空間系の広がりのある音像が印象的で、徐々にノイズの渦が浮かび上がってくる曲展開はトランスやクラウトロック的なイメージも。そこから間髪入れずに、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン直系ながら、よりヘヴィにしたような“バースデイ”を畳み掛け、さらに凶暴な音塊を叩き付けていく。赤い照明がシアトリカルな雰囲気を作り上げる中、ラストに披露されたのは“狂おしい”。ガレージロック的な勢いとポストパンク的な細やかなリズムアプローチを掛け合わせるなど、このバンドの探究心を最後まで感じさせた。宣言通り、25分間を音楽のみで勝負したライブだったと言えよう。
最初からフロアがぎっしりと埋まっていたわけではなかったが、暗闇に包まれていた場内に明かりが灯ると、そこには彼らの音世界に魅了されたたくさんのオーディエンスが。FRONTIER STAGEの次の出演者、同郷の先輩にあたり、バンドにとっての大きなインスピレーション源でもあるTHE NOVEMBERSのステージへと確かにバトンを繋いだ。
<SETLIST>
01. 生活
02. 花束
03. 新曲
04. バースデイ
05. 狂おしい
[text:金子厚武 / photo:古溪一道]
昨年UK.PROJECT主催オーディション「Evolution!Generation!Situation!Vol.2 supported by Eggs」でグランプリを獲得し、イベント全体のトップバッターを務めた福岡県久留米を拠点とする5人組・aintが今年は堂々FUTURE STAGEに登場。くしくも「UKFC」当日に発売されたファーストミニアルバム『灯』からの楽曲を並べ、オーディエンスにバンドの存在を強く印象づけた。
一曲目に披露されたのは『灯』でもオープニングを飾っている“君のこと”。ニシダコウキとusakoの男女ボーカルにスクリーム担当のベーシスト・清風も含めたトリプルボーカル&トリプルギター、ポストロック経由の複雑な曲展開やテクニカルなフレーズ、さらにはアグレッシブなステージングと、とにかく情報量の多いバンドであり、その熱量はFUTURE STAGEの大きさを早速はみ出している。
続く“透明な世界”でのディレイを使ったフレージングやライトハンドなど、演奏面での注目はソングライティングの担当であり、ステージ後方でドラムのもっちゃんとともにフロントの3人を支える海野タカアキ。一方、「外は快晴ですが、雨の曲を」と言って始まったバラード“催花雨と踊り子”ではニシダが美しいメロディーを歌い上げ、バンドの多面的な魅力をアピールして行く。
「去年はオーディション特典としての出場でしたが、今年は正式に家族としてここに立てています。UK.PROJECTからリリースしたいとバンドを組んだときから思ってたけど、もちろんここはゴールじゃないし、そっちのステージ(FRONTIER STAGE)にも もっと大きなステージにも立ちたい」と想いを伝ると、荘厳なイントロから始まったのは、『灯』のリードトラックであり、BIGMAMAの金井政人がプロデュースを担当した“Moondrop”。トランシーなヴァース、しっかりと歌を聴かせるコーラス、清風のスクリームと、バンドの個性を一曲の中に巧みに配置しつつ、現在のBIGMAMAにも通じるスケール感をプラスしたこの曲は、aintの新たな名詞代わりとなる一曲だと言えよう。
「誰かのためにとか、何かを伝えたいとかじゃなかったけど、6月に出したシングルのツアーを回って 僕らの曲が誰かのためになってるという実感を感じました。これからも自分の好きなことをやっていくけど、それがあなたのためになれば最高です。踊らせたりするのは得意じゃないけど、あなたの心に一番近いところにいます」と話し、最後に披露されたのは“Alnitia”。流麗なアルペジオに始まり、徐々に体温を上げ、エモーショナルに歌い、音を届けようとする姿には、確かな感動があった。
<SETLIST>
01. 君のこと
02. 透明な世界
03. 催花雨と踊り子
04. Moondrop
05. Alnitia
[text:金子厚武 / photo:古溪一道]
6月から自主企画「O/g」を全国各地で開催し、7月には4年ぶりとなる「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演、RED MARQUEEで堂々たるライブを披露したodol。「O/g」の東京公演では10月のアルバムリリースを発表するなど、着実に歩みを進めつつある。これまでの「UKFC」では常に異物感を放ってきたが、今年はそんな独自のスタンスはそのままに、経験値を高めたことによって、少しずつオーディエンスへとリーチしつつあるバンドの現在地が伺えたように思う。
SEなしで6人がステージ上に姿を現すと、森山公稀のピアノをはじめ、まずはそれぞれが思い思いに音を重ねて行く。ミゾベリョウの「UKFC後半戦、楽しみましょう」の挨拶と共にその演奏が熱を帯びると、そのまま一曲目の“大人になって”へ。5月に配信でリリースされたこの曲では、バンド全体が一定のリズムを刻み、そのヒプノティックな心地よさの中、ミゾベが自由に体を揺らし、ときにねじり、手を伸ばしながら歌を届けて行く。
さらには井上拓哉がエレキギターからシンセへとチェンジし、ダンスミュージックに接近した新曲“four eyes”へ。早川知輝もエレキギターではなくサンプラー、Shaikh Sofianもエレキベースではなくシンセベースをプレイする中、垣守翔真のスネアロールに合わせてミゾベが〈僕は普通じゃない 今も信じていたい 僕は普通じゃない まだ信じていたい〉と何度も繰り返し、ブレイクを迎える瞬間は間違いなく序盤のハイライト。後半では早川とShaikhが再びエレキに持ち替え、生演奏の勢いを前面に押し出すことで、ミゾベの歌もさらに熱を帯びて行った。ここまでの2曲は、変化を続ける現在進行形のodolを象徴していたと言えよう。
井上も再びエレキに持ち替え、リバーブがかった独自の音像を聴かせる“綺麗な人”まで駆け抜けると、ここからステージの雰囲気は一転、バラードの“years”へ。前半の実験的な側面の一方で、エバーグリーンな美しいメロディーもまた彼らの大きな魅力である。ラストはミゾベもエレキギターを持ち、トリプルギターで聴かせる“生活”。この曲でもミゾベは身をよじりながら、美しいメロディーを力強く歌い上げ、短いながらもバンドの魅力を凝縮したライブを終えた。
音楽性がカテゴライズしにくいだけに、ライブも決して即効性があるタイプではないかもしれない。しかし、実験性と普遍性を両脇に抱え、観るものの心にざわざわとした異物感を残すこういうバンドこそが、長く聴かれ、愛される存在になりうることを、僕は知っているつもりだ。
<SETLIST>
01. 大人になって
02. four eyes
03. 綺麗な人
04. years
05. 生活
[text:金子厚武 / photo:河本悠貴]
2014年から5年連続のFUTURE STAGE出演。「UKFC」の常連として、確固たるポジションを築きつつあるウソツキ。この会場には欠かせないあの曲はもちろん、9月に発売されるニューアルバム『Diamond』からの楽曲もいち早く披露し、あくまで最新型のバンドの姿を見せてくれた。
今年も吉田健二のギターによる汽笛と車輪の音が鳴り響き、竹田昌和の「決して嘘をつかないバンド、ウソツキです。銀河鉄道に乗ってあなたに会いにきました!」という挨拶から“新木場発、銀河鉄道”でライブがスタート。サビではフロアからたくさんの手が上がり、FUTURE STAGEここまでの出演者の中でもリアクションはピカイチだ。もしかしたら、このイベントでこの曲を覚えたという人も多いのかもしれない。さらには“ボーイミーツガール”へと続け、ボーイとガールでひしめく場内に爽やかな風が吹き抜けていく。
MCでは「おそらくなんですけど、早く[ALEXANDROS]観たいですよね?」という問いかけに笑いが起こるも、「でも精一杯歌うんで、ぜひ聴いていってください!」との言葉に大きな拍手が贈られる。そこから「新しい夏の曲を作りました」と言って披露された新曲“夏の亡霊”は、浮遊感のあるシーケンスを用いたミニマルでクールな小気味いいダンスチューン。新しい一面を感じさせつつも、間奏の熱い演奏はウソツキらしくもあった。
「新作はウソツキのダイアモンドなので、本物じゃなくて偽物なんです。でも、本物より美しい偽物を作りました」とアルバムに込めた想いを語ると、「愛の意味を考えてみたけど、結局分からなくて、この曲を作りました」と、もう一曲の新曲“名もなき感情”を披露。一聴しただけでも言葉が引っ掛かり、ブックレットをちゃんと読みたくなる歌詞と、切なくも暖かみのあるメロディーの組み合わせがまさにウソツキ印な名曲だ。“夏の亡霊”と合わせ、来るべきアルバムへの期待を煽るには十分な2曲だったように思う。
「今日観てくださったみなさんに、一生分の愛を込めて」と、最後に演奏されたのは“一生分のラブレター”。軽快な4つ打ちにのせてポップなメロディーを歌い上げると、再びたくさんのオーディエンスから手が上がり、大団円を迎えた。「UKFC」常連のお客さんにとっては、この曲のメロディーも、そして、ウソツキが決して嘘をつかないバンドだってことも、もう十分浸透しているはず。
<SETLIST>
01. 新木場発、銀河鉄道
02. ボーイミーツガール
03. 夏の亡霊
04. 名もなき感情
05. 一生分のラブレター
[text:金子厚武 / photo:古溪一道]
2014年にUK.PROJECT主催のオーディション「Evolution!Generation!Situation!」最優秀アーティストとしてFUTURE STAGEに初登場。結成5周年を迎え、今年は堂々FUTURE STAGEのトリを務めるHelsinki Lambda Club。これまでCD、USB、アナログなど様々な形態で「ファースト」シリーズを発表し、8月に発表した“Jokebox”が初の「セカンド」配信シングルだったりと、彼らに対して「ちょっと変わったバンド」という印象を持っている人も多いかもしれない(実際、そうではあるのだけど。特にベーシストの動きとか!)。しかし、この日はそんなイメージ以前に、彼らがとにかくいい曲を作り、歌い、演奏してきた希有なバンドであるということを存分に知らしめるライブだったように思う。
ザ・キンクスの名曲“The Village Green Preservation Society”をSEにメンバーが登場して、フィードバックノイズから始まったのは“Skin”!〈スキンして?あとは好きにして?〉の名フレーズを持つ激キャッチーなナンバーで、勢いよく幕開けを飾る。ひとつ前の[ALEXANDROS]のハイファイなサウンドと比較するとずいぶんとローファイではあるものの、この生々しさもやはりバンドの魅力だし、飄々とした佇まいもいい。
軽快なビートとコーラスの“ユアンと踊れ”、まどろみの白昼夢ポップ“King Of The White Chip”と続け、「自由に踊りましょう!」と声をかけると、6月に「ファースト」配信シングルとして発表された“PIZZASHAKE”へ。音源ではホーンやキーボードも入った豪華なアレンジだったのに対し、ライブでは骨格のみのミニマルファンクといった感じだが、音数の少なさによって、逆にアレンジの妙とメロディーのキャッチーさがよくわかる。
「もうめっちゃ楽しいですけど、さらにいい夜になるらしいんで、よろしくお願いします」と改めてオーディエンスに挨拶をすると、前述の“Jokebox”を披露。こちらはヘルシンキらしいオルタナ感がありつつも、いつになくストレートなポップナンバー。ザ・ナックの大ヒット曲“My Sharona”のリズムを用いた間奏も楽しいんだけど、やっぱり橋本薫のメロディーメーカーとしての才能が際立つ。ちなみに、この曲のタイトルの元ネタはザ・ストロークスの“Juicebox”だと思うんだけど、次に演奏された“Lost in the Supermarket”のリフはおなじくザ・ストロークスの“Reptilia”っぽくて、あえてこの2曲を並べたのかも。
さらに“素敵な負け犬”をパンキッシュに畳み掛け、ノイズをまき散らすと、サイケデリックなイントロから、ラストは爽快感のあるコーラスが印象的な“This is a pen.”まで、一気に駆け抜けて行った。ちなみに、この日のサポートドラムを務めたのは、この後に大トリとして出演したthe telephonesのフロントマン・石毛輝の現在のプロジェクトYap!!!のドラマーである柿内宏介。こんな粋なリレーも、レーベルのイベントならではだ。
<SETLIST>
01. skin
02. ユアンと踊れ
03. King Of The White Chip
04. PIZZA SHAKE
05. Jokebox
06. Lost in the Supermarket
07. 素敵な負け犬
08. This is a pen.
[text:金子厚武 / photo:古溪一道]
■その他公演のライブレポートもぜひご覧ください!
8/22新木場 FRONTIER STAGE
http://ukproject.com/column/2018/08/15430/
7/8 名古屋UPSET公演
http://ukproject.com/column/2018/07/15200/
7/29 大阪CONPASS公演
http://ukproject.com/column/2018/08/15262/
8/5 下北沢CLUB Que公演
http://ukproject.com/column/2018/08/15276/
UKFC on the Road 2018
○7/8(日)愛知・池下CLUB UPSET ※公演終了
出演:ウソツキ、KFK、odol
ゲストバンド:LILI LIMIT
O.A.:postman
○7/29(日)大阪・心斎橋CONPASS ※公演終了
出演:teto、polly、Yap!!!
ゲストバンド:LOSTAGE
O.A.:aint
○8/5(日)東京・下北沢CLUB Que ※公演終了
出演:Helsinki Lambda Club、SPiCYSOL
ゲストバンド:SCOOBIE DO、トリプルファイヤー
○8/22(水)新木場STUDIO COAST※公演終了
出演:the telephones、aint、[ALEXANDROS]、BIGMAMA、Helsinki Lambda Club、THE NOVEMBERS、odol、polly、POLYSICS、postman、teto、TOTALFAT、ウソツキ
UKFC on the Road 2018 オフィシャルHP
http://ukfc2018.ukproject.com/