interview
【UKP OFFICIAL INTERVIEW】須藤(髭) x 近藤(No Buses) x 橋本(Helsinki Lambda Club) 鼎談企画 「なに聴いてる?聴いてた?聴かせたい?」
はじめに。鼎談に入る前に今回の企画の簡単な説明を。その前にこのテキストを書いているのは誰なのか?ということで自己紹介になりますが、わたしはユーケープロジェクトというレコード会社でHelsinki Lambda Clubを手伝ったり手伝わなかったりしている軽部と申します。ある日、ふと今回の企画を思いついたのですが、普段の日常で新しい音楽との出会いって、サブスクで自動生成されたプレイリストの楽曲からだったり、アマゾンなどのオンラインショップで購入履歴や関連性に基づいた商品だったりで、気づけばパソコンやスマホから蓄積されたデータをもとに、AIが勝手にオススメしてくることに対してなんの疑問を持たずにスラスラとインプットされていることに抗いたくなってしまい、信頼できる人間から直接好きな音楽をオススメされてみたいと思ったことがこの企画のきっかけとなり、ならば洋邦問わず狂ったように音源をディグっている橋本薫を中心として、橋本氏と懇意な関係であり先輩である髭の須藤寿さんと、後輩であるNo Busesの近藤大彗さんを招き、鼎談を実現することができました。
音源リリース時にプロモーションの一環としてインタビューをする業界の通例を無視して、プロモーショントークとは無縁な話を徹頭徹尾この鼎談で実現できたら!と思いながら鼎談スタートです。
テキスト / 写真:軽部徹(UK.PROJECT)
編集協力:田村千里(UK.PROJECT)
—–では、さっそくですが、まずは須藤さんから橋本くんと近藤さんに「これオススメだよ!」という1枚、または1曲でもいいですけどお願いします!
須藤:あのーアルバムなんですけど、2009年にリリースされたときからもうずーっと聴いているというやつがあって、シガー・ロスのヨンシーのソロ、ヨンシー&アレックスの「Riceboy Sleeps」これ、ずーっと入っているの。
橋本:ヨンシーのソロ?
須藤:そう。ヨンシー&アレックス。ヨンシーがアレックスという相棒と。まあシガー・ロスっちゃあシガー・ロスなんだけど…うん…でもシガー・ロスといってもちょっと違う。これは全曲いいんだよ。
♫ Riceboy Sleeps / Jónsi&Alex
一同試聴。
須藤: 2019年にリマスターされて。そのときに俺これ好きすぎて、レコードプレイヤーがないんだけど、うちのギターの斉藤は、すごい完璧なオーディオをがちがちに固めて家でレコードを聴くのね。だから俺好きなアルバムができると斉藤にそのレコードを買ってっていう。
一同:笑
須藤:で、このアルバムが去年リマスターされて、アナログになって、斉藤くん今しかないよって、これ限定だよって言って斉藤くんは買ってくれたという笑。で、斉藤くんの家でちゃんとアナログでも聴いたという。僕が特に気に入っているのは、6曲目かな、「All The Big Trees」。
♫ All The Big Trees / Jónsi&Alex 〜「Riceboy Sleeps」2019リマスター版
一同試聴。
近藤:これ、あとで記事になった時にちゃんとリンク辿れますよね?
—–はい、辿れるようにします。
須藤:うんうんうん、聴いてほしい。しかも2019年のリマスターだから、これ。うん、いいと思います。修正されているんで。これねこれ、徐々にこれがずっと上がっていくんで最後こわいくらいに大きくなっていく。
一同:笑
近藤:まだ全然わからない。
須藤:全然わからないよね笑 このままじわじわ上がっていく笑 これがなんかすごい好きで。
—–橋本くんはどうですか?
橋本:いきなりなんか意外なところから、セレクトされましたね。
須藤:あ、ほんと?あ、そうだよねー。
橋本:須藤さんのバックグラウンドの広さが伺えますね。 いや、これなんか、めっちゃいい音で聴きたいですね。
須藤:そうそうそう。すげー音いいよこれ。このアルバムでこの曲が一番音量MAXかな。
一同:笑
須藤:この後音量MAXがくるけど。
—–近藤さんはシガー・ロスとかヨンシーは聴いてました?
近藤:シガー・ロスは一番有名な1枚ぐらいしか聴いたことないんですけど。
橋本・須藤:裸で走ってるやつ?
※「Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust」(2008年発売)
近藤:はい。
近藤:でもそうですね、これもっと聴いてみたいですね。ここだけ聴いた感じだと、まだちょっと全貌掴めないですけど。
橋本:笑
須藤:わかんないよね笑。寝起きとか寝るときとかいいっす、これは。
—–須藤さんオススメありがとうございます。では続いて橋本さんお願いします。
橋本:これは、おふたりそれぞれに?
—–ふたりでもいいし、みんなにでもいいですし。
橋本:それぞれだと、まず須藤さんが、イージ。
須藤:うん、聴きたい聴きたい。
橋本:イージの「Raingurl」という曲。韓国のHIPHOP寄りのエレクトロなんですけど。こないだ個人的に須藤さんに最近オススメのプレイリストを送ったんですけど。
須藤:送ってくれたよね。
橋本:そのときはROCK系がメインだったので、ちょっとダンス好きな須藤さんにオススメしたいやつで。
須藤:ありがとう!いえーい!
♫ Raingurl / Yaeji 〜from「EP2」
一同試聴
橋本:近藤くんはイージすき?
近藤:イージ、そんな、めっちゃは聴いてないですけど、曲によって聴いてますね。
—–これは最近の曲なんですか?
橋本:2017年なんでわりと最近ですね。でも、リミックスとかの方がかっこいいかもしれないですね。
須藤:うんうん。
橋本:これが須藤さんにっていう。
須藤:いいね、ありがとう。
—–須藤さんは普段HIP HOPとか聴きます?
須藤:いや、聴かないですね。
橋本:まあでもがちがちのHIP HOPというか、ちょっとエレクトロっぽい感じで踊れるやつなので。
須藤:いいね。
橋本:ボイラールームでやってたアルバムもよかったです。…で、近藤くんにはオススメというか知っていると思うんだけど、これも曲単位になるのかな…スピッツの「君が思い出になる前に」。近藤くんはスピッツ好き??
近藤:スピッツ…実はそこまで通ってないんですよね。あまり聴いてこなかったです。
橋本:そう、なんか、このスピッツのエモさがある感じの曲を近藤くんに書いて欲しいなという願望で選びました。
♫ 君が思い出になる前に / スピッツ 〜「Crispy!」
一同試聴
—–これは何年くらいにリリースされた曲ですか?
橋本:これは93年ですね。
須藤:93年かあ。Aメロはこういう流れなんだね。
橋本:サビは聴いたことがあると思います!
<サビ♪>
須藤:あーこの曲か、めちゃめちゃ知ってます!
橋本:個人的にスピッツのアルバムって、年によって一番好きなアルバム変わるんですけど今の僕はわりとこの「Crispy!」が好きですね。
—–スピッツって、ハードコアの人とかも意外と好きな人がいませんか?
橋本:あーそうですね、もともとパンクの人ですしね。
—–ありがとうございます。では近藤さんのオススメをお願いします。
近藤:僕はおふたりみたいに意外なチョイスというよりは、わりとご存知かもしれないんですけど。
橋本:はいはいはい。
須藤:全然全然。
近藤:大丈夫ですか。サムワン・スティル・ラヴズ・ユー・ボリス・エリツィンっていう。
橋本:え、わかんない…笑
近藤:僕ら3バンドのふわっと共通項みたいなのを考えて、多分そのバンドの中でもそこまでメジャーなアルバムじゃないんですけど、「The High Country」というアルバムがあって。
♫ Line On You / Someone Still Loves You Boris Yeltsin 〜「The High Country」
一同試聴
橋本:あーもう絶対好きだわ。
須藤:うんうん。
—–ウィーザー っぽいですね。
近藤:あ、そうですね。
橋本:あーもう…好きなやつですね。
一同:笑
須藤:これはいつ?
近藤:2015年です。なんかでも活動自体はもうちょっと前からやってて。
須藤:そうなんだ。聴いてみよう。
橋本:知らなかった。
近藤:これ僕は好きなので、もしかしたらおふたりも好きかな、という…
橋本:いや、絶対好き!
須藤:そうだね!
近藤:このアルバム以外にもすごくいい曲多いんで。よかったら。
橋本:こういうバンドに俺は弱いからなあ。
—–では続いて最近お客さんにこれいいよっていうオススメをお願いします!
須藤:なにがいいかな?いくつかアルバムを用意してきたんですけど。このスピリチュアライズドがすごい好きで、スピリチュアライズドの「Sweet Heart Sweet Light」っていうアルバム。これもよく聴いてたな。最後の曲がすごい好きで、長いんですけど。この曲すごい好き。
♫ So Long You Pretty Things / Spiritualized 〜「Sweet Heart Sweet Light」
一同試聴
須藤:ちょっとこれ盛り上がるまで長いんで。こんな感じです。
一同:笑
—–須藤さんは意外とチルアウト寄りというか音響派というか。
須藤:僕は、だからねそうなの、あんまりギターロックとか聴かないの実は。
一同:笑
須藤:ほんとはいろいろと知ってないといけないんだろうなと思うけど。…あっ、こっから、ちょっとB展開で変わってくんですけど、こっからすごいよくて。
橋本:壮大な。
須藤:そう。
橋本:あー多幸感ですね。
須藤:多幸感だよね、思ったけども、多幸感なのよ。
橋本:はいはい。
須藤:これを永遠に聴いてます、もう。
橋本:須藤さん好きそうっすね。
須藤:そうそうそう、もうなにも展開しないもん。みたいな。
橋本:かっこいいなあ。
—–須藤さんは音楽を聴くときにUKとかUSとか国を気にしますか?
須藤:もう今は全然気にしないですね。
—–皆さんはどうですか?
橋本:僕も最近はそんなに気にしないかもしれないです、聴くときは。聴いていってはまっていったときにこれってどっちなんだろうって思って調べたりとかはありますけど。最近入り口としてはそんなに気にしないです。
—–なるほど。No BusesとかはUKっぽさみたいなものを勝手に感じてますが。
近藤:あ、はい。でも最近はそこまで気にしてないですね。やっぱ音楽聴きたてぐらいときの方が、どっちかというと意識して聴いていたというか。どこの国なんだ?って聴いてたんですけど。いまはやっぱり情報量が多くて、ひとつひとつどこ出身なのかとか追いきれないので、そこまではみてないかもしれないですね。たまに気になって、そういえばどこだっけって調べるみたいな。
須藤:曲しか知らないよね。
橋本:まあそうなって来ますよね。
須藤:もう俺全然知らないもん、誰が誰とか。どこの国とか、何人組かも知らないし。
近藤:それはありますね。
橋本:いや、そうっすね。何人組とか結構わかんないですね。
—–ちょっと話それちゃうんですけど、メンバーの名前を全員言えるバンドっていますか?
須藤:だからもうそれですよね。
一同:笑
須藤:だから僕、90年の終わりくらいで終わってるんじゃないかなあ。
橋本:そうですね、たしかに。
須藤:ストロークスとかでさえ、なんだっけもうひとつさ、ストロークスともうひとつあったじゃん。
橋本:その頃のバンドですか?
須藤:その頃のバンドで。
橋本:リバティーンズとか?
須藤:そう、リバティーンズ!あの人たちでさえ、全員言えないもんねもう。あのくらいまでがバンドっぽく浮かぶのかなあとか。
橋本:ちょっともう記憶が怪しくなってきてますね。
—–リバティーンズとか言えそうじゃない?
橋本:リバティーンズは、カール・バラーとピート・ドハーティーと、ベースがなんだっけ?ドラムがえーと…パウエル的な…なんかそんな感じ。
※ベース:ジョン・ハッサール ※ドラム:ゲイリー・パウエル
近藤:そうですね。そんな感じでしたね。
橋本:やばいもう思い出せないです。
近藤:たしかに。
須藤:ねえ〜。それ以降はわかる?
橋本:以降は特にわかんないですね。
須藤:わかんないよね、以降はもっとわかんないよね。
橋本:これがもう限界な気がします。
—–ではビートルズとかは?
橋本:ビートルズはわかります!でも、最近はやっぱそこまでがっつりメンバーの人柄とかまで含めてはまるみたいなの、あんまりないんで、名前まで覚えないですね。
—–日本のバンドだとすると?
須藤:あーわかんないなあ。
橋本:日本も全然わからないですね。知り合いのバンドとかでも名前を知らなかったりするときもありますからね。
—–ということは同様にお客さんからしてもそういう感じなんですかね?
須藤:じゃないですか。
橋本:ですよね。
—–例えば、ボーカルの名前はわかるけどドラムの人は知らないみたいな。
須藤:ボーカルはそういった意味では得するというかそれは相変わらず、代名詞になってるんだろうけど。
橋本:多分そうなんでしょうね
須藤:スピリチュアライズドもやっぱそういうことですよね。
橋本:スピリチュアライズドの名前はわかんないなあ。
須藤:ジェイソンでしょ、まあ彼ですね、スペースメンスリーのときとかその前のときから僕好きなんですけど。それこそめちゃくちゃチルだし。
橋本:ほんとに名前まではわかんないなあ。
須藤:わかんないよね。あまり気にしないというか。
橋本:近年はその傾向が強いですね。単純に、記憶力の問題もありますけど。
—–すみません話が名前に逸れましたけど、橋本くんのお客さんにオススメは?
橋本:そうですね、えーと、髭ちゃんのお客さんだと、ちょっとあえて感はあるんですけど、フリーディー・ジョンストン。
♫ Bad Reputation / Freedy Johnston 〜「This Perfect World」
一同試聴
橋本:90年代のシンガーソングライターで、髭ちゃん的な切なさみたいなのもありつつ、たぶん昔からのファンの方とかだったらちょっと懐かしい感じもあるだろうし、新しいお客さんとかにもこういう時代のものも聴いてもらったら他にも広がっていくんじゃないかなと。
—–これってメアリー・ルー・ロードが「The Lucky One」って曲をカバーしてた人ですね。
橋本:そうでしたね。で、この「Bad Reputation」って曲はティーンエイジ・ファンクラブ感も近くありつつ。
須藤:ほんとだね。
橋本:そういうのが好きな人にはまるかな、と。ちょっとファウンテンズ・オブ・ウェインとかそんな感じの。
須藤:うんうん。こないだ亡くなっちゃったよね。
橋本:そう、アダムが。
—–突然の訃報でしたよね… 続いてになりますが、No Busesのお客さんにオススメは?
橋本:No Busesだと、これはたぶんもうお客さんも音楽詳しい人が多いだろうから知っている人多いと思うんですけど。ファー。
♫ If You Know That I’m Lonely / FUR
一同試聴
橋本:ファー好きだよね?
近藤:はい。たしかにお客さんでファーも好きってひといますね、すごい。
橋本:絶対好きそうだなと。まあたぶんどっちかというとNo BusesってUSインディー感の方が最近強いかな?と僕は思っているんですけど、でもこういうやっぱUKの感じとかフレーズとかがすごい親和性あるな、と思って。
—–これはNo Buses好きな人は気に入ってもらえそうですね。さすがです。では続いて近藤さんお願いします。
近藤:サブスクにないやつですが…YouTubeにはあります。サンシャイン・アンダーグラウンドの。
橋本:あーおしゃれすね。あ、サブスクないんだ。
近藤:ないんですよ。「Raise the Alarm」ていうアルバムなんですけど、2枚出してて有名な方がたぶん。
橋本:1枚目の方かな。
近藤:そうですね。そのアルバムがたぶん3バンド共通してお客さん好きそうだなと。
須藤:そうだね、うんうんうん。
近藤:「Commercial Breakdown」とか。
♫ Commercial Breakdown / The Sunshine Underground 〜「Raise the Alarm」
一同試聴
橋本:俺、めっちゃ好き!
近藤:あ、嬉しいですね。この3バンド共通してお客さん好きそうですよね。
橋本:そうね 好きそう。好きそう。
須藤:うんうんうん。
橋本:めっちゃ懐かしいなぁ。
—–ルックスもかっこいいですね。
近藤:そうですね。
橋本:ニューレイヴとかその頃かな。
近藤:そうですね、ちょうどそういう感じも入ってるしガレージ感もあって、この曲は。
橋本:たしかにね、この曲とかそうだよね。笑
—–ミュージックビデオもおもしろいですね。コマどりみたいな。
近藤:そうですね、おもしろいです。
—–いつ頃のビデオですかね?
近藤:2006年です。
—–その時って近藤さんは何才でしたか?
近藤:9才とかですかね。
橋本:ちなみに僕は高校生だった。
須藤:いやあ、そこがやっぱりすごい年の差があるね、僕が当時27才ですから。9才!今何才なの?
近藤:今、23才ですね。
須藤:じゃあ、え?20個違うの?僕が43だもん。そうなんだ。9才、じゃあこれ後追いで知ったの?
近藤:そうですね。
須藤:でもたまにいるよね、小学生の時にさ。
近藤:たまにいますね。
須藤:ここまで掘って聴いている人はいないかもしれないけど、親とかお兄ちゃんとかの影響とかで聴いている人いるよね。
近藤:ここまでコアではないですけど、バンド好きみたいな人たまにいますね。
—–近藤さんが、最初に音楽にのめり込んだ一枚、というかきっかけって?
近藤:ONE OK ROCKからですね、そういうのでいうとたぶん。ちゃんとアルバムとか意識して聴くようになったのは。
—–それ何歳くらいのときですか?
近藤:それが中学3年生とかだったので15才です。高校入る前だったと思うんで。そのくらいのときに、はじめてその、いままで音楽にそこまで興味がなかったんで、中学校入るくらいまでは、というか高校入るくらいまではなかったんで、聴くといってもアーティストのシングルだけを聴いてた感じです。アルバムという概念がそもそもそこまで浸透していなかったです。
須藤:いまもっとないだろうね。今の子たちはアルバムの概念というか別にそのアルバムで聴く必要性がないというか。
橋本:いや、ないっすよ。
近藤:そのときはまだギリCDの世代だったので、今はよりサブスクになってますし、アルバムの概念が薄れているかもしれないですね。
須藤:そうだよね。
—–その類の話になりますが、最近橋本くんの友達で、The Whoopsというバンドのギターボーカルで宮田くんって人のツイートがバズってましたね。
橋本:ですね。彼の弟が学校の教師をやってて、その生徒が言ってた話で名盤という概念がないらしいんですよ。もう。
須藤:あーいや、そうだろうね。
—–配信を単曲で聴くから、名曲はあるけど名盤がないっていうツイートでしたね。
橋本:名盤が説明できないみたいな。
須藤:いや、だから俺逆になってきちゃってるって。さっきからもうずっとアルバムをオススメしてたじゃないですか、アルバムならどの曲聴いてもいいよっていう1枚を全部出してるから。さっきはヨンシーだし。この音源って始まってるの?って感じのアルバムだったと思いますし。
—–たしかに。アルバム全体にコンセプトがあって、通してってことですもんね。
須藤:通してだから、イージーリスニングっちゃもう超イージーリスニングで。ジャズとかテクノとかそういうのばっかりいっちゃってる。わからないくらいが楽というか。
橋本:あーそれはありますね。
須藤:うん、ほんとにそうで。
—–でもアーティスト泣かせな価値観ですよね。良くも悪くもですけど、単曲だけでガッといけることもあるけど、でも大体みなさんアーティストの人ってこういうアルバムにしたいとか、曲の並びを気にするじゃないですか。この前後にこれがあるから抑揚がついてこれが、とか。
橋本:そうなんですよね。
須藤:俺もう気にしなくなってきたかな、あんまり。でも曲順は気にするか…少しはね。でももうそんなストーリー的なロマンはなくなってきてるような気がするな、特に曲間とかも何秒でもいいよ。
橋本:あ、ほんとですか?
須藤:全部3秒均一でもいい。
橋本:いまだにめっちゃこだわっちゃってる…
須藤:俺も前まではこだわってたけどもう全部今回も3秒均一だな。
橋本:僕は次のアルバムでそこをこだわりきったので、そこから先は逆に気にしなくなるかもしれないですね。
—–マスタリングのそれこそ曲間作業の認識が変わってきちゃいましたよね。
須藤・橋本:変わってきちゃいましたね。
須藤:俺、1回8秒とかあけたことあるよ。
一同:笑
須藤:すごいでしょ?すげー長いじゃん、8秒って。それくらい好きだったよ、俺も。8秒あけたりして、あれ?あ、やっぱまだ終わらないよねみたいな笑 だけど今ではもう均一3秒。
—–須藤さんの世代だとボーナストラックとかありましたよね。
須藤:ありましたよね。
—–ニルヴァーナとかもありましたよね。
須藤:ありましたありました。だからニルヴァーナなんて10分とか空白聴いてから、すっごいトラック流れてきて。デモみたいな。
橋本:ありましたね。
—-でも若い世代の近藤さんはどう感じました?ボーナストラックとか、シークレットトラックみたいな。
近藤:でもCDは同世代でもわりと買ってた方だと思うんで、ボーナストラックまで聴くみたいなこととかはありましたね。
須藤:ねえあれとか知ってる?なんかさすごい面白かったのが、ボーナストラックでよくあったやつで、たとえば10曲目で終わったら急にそこから11、12、13、14、15、16って1秒ごとに変わっていく謎のCDがいっぱいありましたよね。
一同:笑
近藤:ありましたよね。
須藤:あれ謎の配慮だな、こっちに対する。あれ訳わかんない。
橋本:あれ、iPodとかでシャッフルで聴いてると、そのなんにもないそのトラックなんとかがでてきて。
須藤:あれ、おもしろかったよね。俺もそれは聴いてた世代だったから、あれとか謎のカタカタカタ…
橋本:バグったと思いますよね。
—–それいつかヘルシンキとかいいんじゃないですか、そういう仕掛けをそろそろ。
橋本:そうですねえ、いやあ、でもこれ以上やったら怒られちゃう。逆行しすぎて。
—–でもCDって何曲入るんですかね?
橋本:トラック数ってどうなんですかね。
近藤:僕、そういう類のその何曲飛ばしのやつで、99ぐらいまでいったやつありましたね。
須藤:99まではいったよね?3桁はだめだったような気が。
—–3桁は表示されないんですかね?
須藤:だった気が。
近藤:かもしれないですね。
※99曲が最大とのことです。
—–では話題を変えまして、少し前まで自粛期間が3ヶ月ぐらいずっと続いてたんですけど、そのときによく聴いていた曲ってあります?須藤さんから伺ってもよいですか?
須藤:えーとなんだろうな、この前買ったのは偶然ネットでみつけたんですけど、映画の「ブエノスアイレス」のサウンドトラック。僕このブエノスアイレスの映画すごい好きで。
橋本:いいっすよねえ。
須藤:これ買っとかないとなと思って。
♫ Happy together / THE TURTLES 〜「Happy together」
一同試聴
須藤:これもともとはタートルズというバンドの曲です。オリジナルは60年代の曲なんですけど、それをダニー・チャンという人がやりだして。これすごい好きで、これもさっきと一緒でこのA展開が終わったら、あとずっとサビが続いてるだけ。もう展開なし!
一同:笑
橋本:「Happy together」のカバー?
須藤:うん、そう。
橋本:へえ。あ、こんな曲入ってましたっけ?映画で。
須藤:これね、エンディングテーマなんだよね、一番最後で。これで感動して調べたのを覚えてて。
橋本:なるほどなるほど。
須藤:これはオリジナルで。だからビートルズの初期感のアレンジ。もうあとはずっとこうサビを歌っているだけという。
一同:笑
橋本:もう戻ってこないんですか。
須藤:戻ってこない。笑 AB、B――――――――――って感じ。散歩が楽しくなるというか。
サウンドトラックなんで基本的にはVarious Artistsっていうんですかね。いろいろなアーティストが入ってるし。フランク・ザッパとかも入ってるし。
—–素敵なサントラのご紹介ありがとうございます。では続いて橋本さんお願いします。
橋本:自粛期間…そうっすね…あんまりアルバムでがっつりって感じもなく、ほんといろいろな音楽をとりとめなく聴いてた感じではあったんですけど強いて言えば、わりと最近のバンドでワロウズってバンドで。近藤くん絶対好きだよ。
近藤:ありがとうございます。
橋本:ワロウズのアルバムは結構聴いてました。やっぱり自粛でライブができなかったので、なんかちょっとバンド感のあるものにすごい焦がれてた感じがあって、めっちゃライブ映像とかも観たりしてました。最近のバンドですごい好きなバンドです。バンド!って感じで。
♫ Only Friend / Wallows 〜「Nothing Happens」
一同試聴
須藤:よさそう!
橋本:ですよね。
—–では、続いて近藤さんは自粛期間中は何を聴いてました?
近藤:僕もいろいろ聴いてたりしたんですが、全然新譜とかじゃないんですけど、フーバスタンクの「The Reason」です。
橋本:懐かしいな。
近藤:僕、これを高校生のときに聴いてて。音楽聴きたてくらいのときに知ったんですけど。それでなんか自粛期間ちょい前くらいに引っ越しして、CDを入れた段ボールの荷ほどきしてたら、フーバスタンクのCDとか持ってたっけと思って。で、聴いてめっちゃ懐っ!ってなって、結構印象的でした。しばらく聴いちゃって。
須藤:うんうんうん。
橋本:この世代ちょうどなんか久々に聴きたい感じ。
♫ The Reason / Hoobastank 〜「The Reason」
一同試聴
—–これまた意外ですね。ONE OK ROCKからのきっかけで、ラウド系というか。
近藤:そうです。元々ラウド系めっちゃ好きで。メタルコアやハードコアとかも聴きつつ、同時にガレージロックとかUKロックとかを聴きながら、ギターも練習するみたいな感じで音楽を知っていったんで。ここら辺結構好きです。
—–今回の鼎談のテーマにもなっているのですが、ラウドロックとかも聴きつつ、UKロックやUSロックとか、何を情報源として知ったのですか?
近藤:当時は、ブックオフやツタヤとかでしたね。学校帰りにブックオフに毎日よって、100円コーナーとかあるじゃないですか。あれ?アルバムだと250円でしたっけ?
橋本:250円かな。
近藤:250円のコーナーで毎日なんか1,2枚漁って帰るみたいなことしてて。高校の帰りとか、音楽聴きたてぐらいのときはそういうのをずっとやってて。
橋本:それ俺もめっちゃやってたな。
—–それってもうそのコーナーを見てなんとなく良さそうなやつを感覚で探す感じですか?
近藤:そうですね。もちろん事前にYouTubeで聴いてたやつで、気になったやつを探してピックアップもあったんですけど、その探してみてなんかやけに枚数多いなってやつって、多分名盤なんだろうなって思って、枚数多いやつとかいっぱい売られてるやつを買ってみて聴いてみるみたいなことはしてました。
橋本:なるほどな。
—–おもしろいですね。珍しくないですか?その世代のひとで。
近藤:そうですね、もうサブスクとかできてたんで。まあ僕ちょっと遅かったんで、始めたのが。わりとサブスク始めてまだ2、3年くらいなんで。
—–たぶんいま40代以上のひとって所有欲が強い世代だったと思うんですよ、ほしいものはとくに。
須藤:そうですね。
—–須藤さんは90年代のときとかの情報源はなんでしたか?
須藤:当時の情報源はフジテレビで放送してた「BEAT UK」とか。「BEAT UK」はすごく深夜に、えーと金曜日の午前3時ぐらいだったかな、めちゃくちゃ追いやられてる時間帯なんだけど。その時間にそれこそね、その頃のオアシスとかレディオヘッドとかメンズウエアとか。
—–出てましたね。ちょうどブリットポップの時代でしたね。
須藤:そうですね。ブラーとか、いやもうあげたらきりがない。ロングピッグスとか。あの頃、一番ギターロックを聴いていた時代というか。レディオヘッドの「High and Dry」を聴いた時ぶっとんだもん。こんないい曲があるのかと思って。
一同:笑
須藤:「BEAT UK」って要するに海外の音楽を流すだけだから、あそこでしかミュージックビデオが観れないみたいな。まだネットがなかったから。
橋本・近藤:そうですね。
須藤:だからその「High and Dry」のミュージックビデオを観て、マーケットの中をぶわーっとトムが走ってるとき、「うわトム・ヨークだ!」と思って、「テレビで観れるんだ!」と思って。録画もしてたけど起きて観てた。はやく観たくて。ニルヴァーナのカートはもう死んじゃっていなかったけど、オアシスの「Morning Glory」のミュージックビデオとか起きてたら観ることができる。みたいな感じでしたよね。
—–そうでしたね。
須藤:あのときはすごい何聴いても楽しかった。それを聴いて、毎日タワレコとかにいって、次の日になんか買い漁ってた気がする。おりゃあ、これもこれもこれもこれも、みたいな。
—–橋本くんは世代的にさすがにこの番組を観たことはないですよね?
橋本:「BEAT UK」はないですね。
—–でも、結構長寿番組だった気がします。
須藤:ずっとやってましたよね。でも、ネットでミュージックビデオが観れるようになっちゃったから。ミュージックビデオが観れる番組としての価値がどんどんなくなっちゃった。やっぱそうなると自然と淘汰されちゃいますよね。
—–いま、調べてみたら90年から2004年まで放送されてました。
須藤:2004年まで!
—–14年もやってたんですね。
須藤:でも2004年のころって多分もう不定期ですよ。毎週金曜日じゃなかった気がする。
—–記憶力がすごいですね。いま調べてみたらそう書かれています。(歴代チャートを見てもらいながら)
須藤:プロディジーとかカイリー・ミノーグとか。そうそう、その時代です。でもこの頃に聴いた音楽は絶対自分の中にもう染み込んでしまっているんだと思うなあ。
—–そうですね、なんか2000年以降の音楽とはちょっと違うかもしれないですね。
須藤:違います。なにかが違います。それこそメンバーの名前がまだ何人か言える時代、かな、俺的に。パルプとかも買ったなあ。
—–だいたいこの辺りのバンド、ブックオフで安いですよね、シャンプーとか。
須藤:ですよね。シャンプーありますよね、ブックオフ行くと。
近藤:めっちゃあります。シャンプーめっちゃあります。
—–スパイスガールズとか。
須藤:そうそう、あとアンダーワールドとかケミカルブラザーズとか、この頃になんか楽しくなってきちゃって。
—–ブラーもランクインしてますね。
須藤:いや、ブラーですよね、その頃は。「BEAT UK」の代名詞って言ってもいいくらいの。毎週「Beetlebum」を聴いてたような気がする。「BEAT UK」で。
—–カーディガンズも載ってますね。でも、最近の若い人ってカーディガンズとか知らなかったりしますよね。
須藤:あ、でも、それはいいことですよね。きっとハッピーな。
一同:笑
須藤:いや、今から聴けるから!いい意味で。うわあ、こんなショッキングなバンド、90年代にいたんだ!という。
近藤:でもたぶんCMかなんかで先に聴いてたりとか。
須藤:「DADDY’S CAR」とかだっけ?
橋本:あと「Carnival」とかですかね。
須藤:有名な曲いっぱいあるよね。
—–ちょうどこの当時、スウェディッシュ・ポップみたいなの日本でめちゃくちゃ流行りましたね。
橋本:クラウドベリー・ジャムとか。
須藤:その時代にすげえ好きだったのが、ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキっていうバンド。それすげえ聴かせたい。
橋本:へえ。
須藤:ジャケットが全部良くて。ゴーキーズはすごい好きで、でもゴーキーズになるとやっぱり「BEAT UK」とかにはでてこなくて。
橋本:これもスウェディッシュのやつですか?
須藤:これはね、あの人たち。あそこの、イギリスの南のあたり。
橋本:アイルランド?
須藤:アイルランドじゃなくて、おしい。もうひとつぐらいあるじゃん。
橋本:ウェールズ?
須藤:ウェールズ!ウェールズ!めちゃめちゃ長い名前の曲名があって、俺それすごい好きで。すごい実験的だし。実験的…実験的じゃないな。ペイブメントっぽさもあるというか。基本的にはサイケロックバンドなんだけど。もういっかいはじめから聴いてもいいですか?ごめん、ただ懐かしくなっちゃった。やばいやばいやばい。
♫ Merched Yn Neud Gwallt Eu Gilydd / Gorky’s Zygotic Mynci 〜「An Introduction To Gorky’s Zygotic Mynci」
一同試聴
橋本:始まり方いいな。
須藤:ねっ。これが94年頃。めちゃくちゃ好きだったな。
橋本:あーもういい感じですね。
近藤:かっこいいですね。
須藤:かっこいいよね、ぐっときますよね。で、この曲の展開を聴いて欲しいんだけど。泣けるよ。
橋本:あー好きなやつですね。
須藤:いいよね涙出る。うるっとくる。このふたりに薦めることができてよかった。
橋本:これめっちゃいいです。
近藤:めちゃいいですねこれ。めちゃめちゃかっこいいです。
須藤:めちゃめちゃいいんだよ。これB展開。
橋本:あ、すげえ。たしかにちょっとペイブメント的なヘブン感も。
須藤:そうなのよ。そうなのよ。
—–ジェリーフィッシュっぽさもあるのかな?
橋本:あーたしかに。
須藤:ジェリーフィッシュはもっとプロフェッショナルじゃないですか。この人たちはもう、なんか。
一同:笑
橋本:楽器が自由にやってる感じですね。へえーしらなかったな。
—–橋本くんなら知ってそうな気がしてたけど。
橋本:知らなかったです。
—–これ稀にブックオフとかだと、200円台で買えるはずです。
橋本:まじっすか。
須藤:いやあーでもあんまり売ってないんだよね。ゴーキーズあるかな。ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキ。
近藤:全然覚えられないです。
須藤:ほんとほんと。ここまでがバンド名。ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキまで。
近藤:僕、ブックオフ結構漁ってましたけど字面みたことないですね。
須藤:だよね。ちなみにYouTubeの総再生回数のうち、20回くらいが俺だよ。
一同:笑
橋本:曲の展開がすげえな。
須藤:(ビデオを観ながら)彼がブレーン。
橋本:へえ。
須藤:どサイケだなあ。
橋本:いいっすねえ。
—–なんかそんなに古臭さを感じないですよね。
須藤:そうなんですよね、まったくクリックなし!
橋本:いや自由すぎるな。
須藤:自由すぎるよね、でも独特なノリがでてるよね。終わりかなそろそろ。今でもこういう曲をずっと書きたいと思ってる。ぶれてないんだなと。
近藤:めっちゃいいですね。
須藤:なんかいいよね。ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキでございました。
一同:笑
—–そういえば、おとぎ話の有馬くんとかゴーキーズをすごい好きだった気が。
須藤:あーそうなんだ!
橋本:あー好きそうですね。
須藤:彼って僕よりもっと年下ですよね?全然
—–年下ですね。UKPからリリースしたアルバムのジャケットでゴーキーズのオマージュをしてました。
橋本:あー、あれ芝生寝転がってるやつですか?
—–そうです!
橋本:なるほど。
須藤:ゴーキーズはアルバムとかも編集されてでてるんだけど俺全部もってるよ。
橋本:えーすごい。
—–ゴーキーズを聴いてめちゃくちゃな盛り上がりましたね。めちゃくちゃといえば、橋本くんもめちゃくちゃな音楽の聴き方してますよね。
橋本:僕も聴き方めちゃくちゃですね。
—–洋楽好きな人って、邦楽を聴かない人が結構いたりするじゃないですか。
須藤:あ、さっきのスピッツとか。
—–はい。日本のJ-POPとか偏見で聴かない人がいたりするなかで、橋本くんはすべてを並列でずっと聴いてて。
橋本:そうですね。
—–そこがすごくいいなって初めて橋本くんと音楽の話をしたときに思って。
橋本:でも、それでいうと近藤くんとかもアイドルとか元々好きなんですよね。
近藤:そうですね。僕元々バンドを聴く前はアイドルとか聴いてました。
—–それはワンオクの前?
近藤:そうですね、そのときはアイドルっていっても、ももクロ聴いてただけなんですけど。
—–そうなんですね。ちなみに橋本さんの若かりし福岡時代のときは?
橋本:僕は、でもほんとにちょうどおふたりの間な感じというか、中学とかのときだと、僕の場合それこそMTVとか、スペシャとかそういうのでわりと新しい音楽とか聴きつつ、HMVのサイトとかでそのアルバムの30秒とかの試聴ができたりして、あとヤフーミュージックとかそういうところでちょっと試聴して買いに行ったりとか、あと、それこそ近藤くんみたいに、ブックオフ行って250円コーナーでジャケ買いとかもありましたし。
—–近藤さんはいまでもジャケ買いってします?
近藤:何回かしたことはあります。
—–サブスクに慣れた世代のひとはジャケ買いという概念はなくて、ジャケを見てまずは音を聴いてみようかなとかそういう感覚になるのかな?
橋本:どうなんですかね。
須藤:今はたぶん、Shazamから。
橋本・近藤:あー。
須藤:だからやっぱ店に流れてるいい曲。でも感覚的に掴みとりに行けるから、ジャケットで買おうとしなくても、たとえば古着屋に行って流れている曲が、あ、これはもう好きっていうのは絶対に好きでいいじゃないですか。俺もう全然、偏見ないですけどね、あ、これいいなと思ったら。だからどんどん自分のやってる音楽と聴いてる音楽が乖離してっちゃうっというか。まあ、それはリスナーはもっと感覚的に掴みに行ってるんじゃないですか。もっとこう含蓄がありそうな気がする、今の人たちは。そういうの駆使して聴いてるから、ジャケットとかバンドとかの絵に惑わされないから。
橋本:あーそれはあるかもしれないですね。
須藤:音がよければそれを単曲で掴みとれるから。で、あとはその関連で繋げていけばいいから。
—–音楽を聴く入り方が昔と変わってきているってことですよね。
橋本:そうですね。そこ含めてっていうのもありますもんね。ほんと良し悪しですけどね。
須藤:でもそういうのってバンドのアイデンティティだから、人は気にする必要ないというか。俺はまあジャケットとか作るの大好きだし。だから全然、それはおもしろいのがいいよね、絶対ね。
近藤:そうですね。
須藤:ジャケ買いはしないんじゃないかな、不景気だし。そんな余裕みんな、ないんじゃないかな。
橋本:まあそうですよね。
近藤:たしかに、はずれたときがすごい。
—–No Busesはジャケットの雰囲気が毎回すごく素敵ですよね。
近藤:あーえーと、そうですね。基本的にベースが自分の代わりにやってくれてるんですけど。犬とか動物が好きなんで彼女は。あとまあ、それをみんなでどれがいいって写真を選んでやってるみたいな感じです。
—–アートワークの方向性に一貫性があってとっても素敵だと思いました。
近藤:ありがとうございます。
—–最後になりますが、この鼎談をやりたいと思ったきっかけのテーマでもあるんですが、たとえば音楽以外でもなんでもいいですけど、なにかを買い物すると自分の癖というか嗜好がパソコンやスマホにどんどんインプットされていって、これが好きならこれも買え、みたいな、洋服とかでもそうだし、買い物ではなくて、ミュージックビデオとか観てても、次はこの曲がよいとか、そうやってオススメされるものを素直に委ねてますか?これオススメされたから買ってみようかな?とか。
須藤:まあ、お店で流れてる音楽と一緒で、Shazamするやつとしないやつは勝手にこっちが選べばいいから、僕はだから占いとか悪いのは信じないですからね、それですよ。あ、これいいから信じようみたいな。全部それ。あんまり気にしないというか。あの、教えてくれてありがとうございますって感じで。別に興味がなければ捨てたり置いておけばいいし、というかどんどん流してるだけなんで。
—–早くもひとつの結論が出てしまった感じになりました。人からのオススメでも、人工知能とか関連付けされて来たものでも、結局のところ判断するのは自分だってことですよね。
須藤:僕的にはそうですね。みんなは?
橋本:そうですね、僕は、AIとかに薦められるものを素直に受けるのがまだ悔しいという気持ちがある派で。Spotifyとかだともう1個調べるとばあーって出てくるじゃないですか。まあ聴くと実際当たるんですけど。
須藤:そうなんだよね。
橋本:実際好みは当たるんですけど。なんかそこにストーリーがなさすぎて、それを好きになる経緯がなさすぎて、いまだにやっぱ僕は好きになるにあたっての間に入るストーリーがどうしても欲しくなってしまうタイプなんで、あんまりAIに勧められた音楽を素直に辿ったりはしないですね。まあApple Musicとかだと、関連アーティストがぽろぽろと出てくるぐらいでそれはちょっと聴いたりするんですけど、ばあーってくるとちょっとあー!ってなっちゃいますね。だからほんとに好きな古着屋とか好きなお店で流れてるもの、扱っているものとかだと、もう全幅の信頼を寄せて素直に好きになったりとかあるけど、結構僕はアナログというか、なかなかそこに入りきれてない感じはありますね。でも好みは実際当たってると思います。
—–説得力ということなんですかね?たとえば、橋本くんが使っているSpotifyで次ゴーキーズがきても、あーはいはいってなるかもだけど、それが須藤さんからゴーキーズいいよって言われると。
橋本:そうですね。
須藤:それは絶対そうだな。それはありますよね。
橋本:自分がセンスを信頼している人とかの方が素直に入って来ます。
須藤:ゴーキーズのあのミュージックビデオ観たら、こいつらセンスあるなって思えるじゃん。
橋本:ありますね。はい。
須藤:こんなセンスね、っていう。ミュージックビデオもそういった意味では大事。
—–今って情報がありすぎて、それを取捨選択するのが難しいじゃないですか。でもSNSをはじめネットがなかった一昔前は本を読むとかテレビを観るとか、直接お店に行くとかっていう選択しかなかったから、なんか逆に大変だなって思って。いまは聴くものがありすぎて。
橋本:そうですね。
須藤:でもなかなかわがままで難しい問題ですよね。俺たちは絶対そうしたかったわけじゃないですか、昔は。もっとたくさんの音楽を聴きたいってなって、そうなったらなったでそんなにいらないんだよねみたいな。どっちだよ、ってみたいなことではあるっていうか。もうほんとに手に入れたかったもん、ミュージックビデオ集とか。ね、そうですよね。
橋本:はい。
—–あと使える時間も多かった気がしてて、情報が少なかった分。たとえば当時ファミコンのソフトとかを買って、明らかにおもしろくないゲームでも結構やりこんでたなって。その感覚が今なくなってしまったのかなって。はい、つまんない、終わり、次、みたいな。
橋本:そうですね。
須藤:ありましたね。ていうか小学校6年生ぐらいまでファミコンのカセットってクリアできるんだっていう。クリアできないもんだと思ってたから。それがベーシックというか。クリアできるゲームってあるの?みたいな、ドラクエ以外に。終わりがあるんだっていう。だって99面までいったら1面ループしたりするんだよ。え?みたいな笑。すげえ難しい1面が始まったりする。
橋本:たしかに。
須藤:だからそういうもんだと思ってたから。
—–だからCDとか少ないお小遣いの中で毎月無理やり買って、よくないと思った音源でも無理やり聴きこむというか。
須藤:あ、それはあるな。よさを見つけようとしたりする。あとジャケ買いで、今思い出した、ジャケ買いとかしてたな。あとは僕で言えば、僕の日本のカリスマといったら奥田民生さんなのよ、ユニコーンの奥田民生さんで。民生さんが、まさにこういう取材のときに「なにを聴いてましたか?」って聞かれたときにビートルズの「Revolver」、あの顔のやつをレコードで持ってきてて。あ、もうそれは聴かなきゃいけないっていうことで、当時僕は中学性だったと思うんですけど、すぐに「Revolver」を買いに行ったら、全然わけわからなくて。「Tomorrow never knows」とか言われてもなんだこれ曲なのかなとか思って、寝かせて、その寝かせという時間があったから。わかんないんだけどうちの棚にずっとある、みたいな。で、高校三年生くらいになったときに、ビートルズのそのモクモクしてる頃というか、サイケなのを聴いたら、あーこう聴けばいいんだみたいな。これ中学生が聴くもんじゃないって。
橋本:たしかに。
♫ Tomorrow never knows / The Beatles 〜「Revolver」
須藤:でも今聴けば、ビートルズで一番好きな曲になってるかも。ミニマルですよね。「You Know My Name」とかね。これ、曲?と思って。その聴いた時は。サビどこ?みたいな。それはなんか覚えてるな。
—–近藤さんはビートルズ、聴いてました?
近藤:そうですね。まあ当たり前ですけど、後追いで。最初はやっぱり、ちょっとよくわからなくて、しばらく置いてから聴いて、あ、いいなってなりましたね。
須藤:こういうのそんな感じで聴けばいいんだみたいなさ、そうだよね。わけわかんないよねこれ。
近藤:はい。なんかやっぱそのレコーディングの感じも違うから。
須藤:違うよね。
近藤:なんかハイファイな音楽を聴いたあとに、それを聴くと、なんだ?なにを聴けばいいんだろみたいになっちゃって。とくにラウドロックとか好きだったときはもう音圧がないなと思って。
須藤:わかるわかる、そうだよね。これなんなんだ?みたいな
近藤:最初はそんなこと思ってないですけど。
須藤:わかるよ。
近藤:やっぱりいろいろなのを聴くとやっぱいいな、ってなって、やっとですね、いろいろ聴いてから好きになりました。
—–みなさん、たくさんのオススメありがとうございました。これ以上進めると3回分ぐらいのボリューム記事になりそうなのでこの辺で終えたいと思います。今回オススメしてくれた楽曲をプレイリストにして記事を読んでくれた方にも聴いてもらって、新しい音楽と触れ合うきっかけになったら本望です。ありがとうございました。
須藤・橋本・近藤:ありがとうございました。
最後に。ビートルズがこの鼎談のラストを締める曲になるとは予想もしていませんでした。Helsinki Lambda Clubの1stEP収録の「チョコレィト」という楽曲の歌詞を少し転載して鼎談記事を締めたいと思います。
「ビートルズは偉大だ 最高だ
音楽という名のタイムマシンを発明したんだ
僕らそれに乗って1962から三千年くらい先まで旅をするんだ」
終わり。
とみせかけて実は今回、鼎談内容とは関係ないのですが、それぞれのお気に入りバンドTシャツを持参してもらったので、それをご紹介させてもらいながら鼎談を終えます。
【髭 須藤寿 お気に入りの3枚】
ニルヴァーナのカートTシャツ。
モリッシーのTシャツ。
バウハウスのボーカル、ピーター・ジョン・ジョゼフ・マーフィーのTシャツ。
【No Buses 近藤大彗 お気に入りの2枚】
モリッシーのTシャツ。
ディセンデンツのTシャツ。
【Helsinki Lambda Club 橋本薫 お気に入りの1枚】
ソニックユースのTシャツ。
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今回の鼎談に登場した楽曲のプレイリスト▷https://ukp.lnk.to/Hige_Buses_Hel/
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<関連サイト>
髭オフィシャルホームページ
No Busesオフィシャルホームページ
Helsinki Lambda Clubオフィシャルホームページ