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【UKP OFFICIAL LIVE REPORT】UKFC on the Road 2016《FUTURE STAGE》@新木場STUDIO COAST
1987年の創設以来、ベテランとも新鋭とも様々なアーティストと繋がって来たUK.PROJECTのレーベル部門とプロダクション部門が総力をあげてお送りする真夏の恒例イベントUKFC on the Road。今年は8月16日(火)新木場 STUDIO COASTにて、全てを1日に詰め込んで盛大に開催されました。
今回は、今年から新設された「GATE STAGE」を含め3つのステージ、全17組のアクトのライブレポート&ここでしか見られない写真も盛り沢山のフォトギャラリーをお届け。記事の最後にはプレゼント企画も!
是非全ステージ分、最後までお楽しみください。
【FUTURE STAGE】
DATS
FUTURE STAGEのトップバッターを務めるのは「UKFC」2回目の出演となるDATS。 “North”からライブがスタートすると、フロントマン・杉本亘がロサンゼルス生まれ・ワシントンDC育ちらしい大陸感のあるビッグなメロディーを歌い、アウトロでは早川知輝がギターソロで魅せる。「DATSです!今日はよろしくお願いします!」と一言挨拶をして、ミニマルなギターフレーズが印象的なダンスナンバー“Candy girl”へ。同時代の海外のダンサブルなバンドやクラブミュージックからの影響を消化して、生のグルーヴへと落とし込んだ楽曲からは、the telephonesの世代が切り開きながら、一部で形骸化してしまった「ダンスロック」をもう一度自らの手で更新しようとするような意志が感じられる。
そんなバンドの姿勢がよく表れていたのが、新曲を連発した中盤のゾーン。シンプルな裏打ちや速いテンポに頼ることなく、抑えめのBPMで踊らせようとする“fuse”は、杉本のルーツであるNIRVANAあたりに通じるオルタナ感もあり、衝動的なステージングは彼らの持ち味と言えそうだ。続く“Fade away”はトランシーな同期を用いた曲で、ブレイクを経て爆発する曲展開はクラブミュージック譲りだが、やはり演奏はどこかゴリッとしている。“awake”もカッティング主体の軽快な曲調ながら、こちらもBPMはそこまで速くない。その上で、ギターとベースがジャンプをしたり、アウトロに合唱系のコーラスを置き、オーディエンスと繋がろうとする姿勢を見せた。
「今日ここでみんなとひとつになれたことを誇りに思います」という感謝の言葉に続いて、ラストの“Cool Wind”ではイントロからクラップが起き、フロアがこの日最大のリアクションを見せる。そして、この曲も基本はダンサブルな曲調ながら、間奏ではラウドなパートに突入し、激しい演奏を披露。このオルタナ感が、やはりDATSというバンドの真骨頂なのだろう。まだまだ新木場STUDIO COASTのフロア全体を揺るがせたとは言えないが、「UKFC」のオフィシャルサイトに寄せた「ありのままの僕らとありのままの皆さんで、地球に生まれた喜びを分かち合いましょう」というコメントにもよく表れている、彼らが描かんとする広大な景色のイメージは、確実にオーディエンスにも伝わったのではないだろうか。
【SET LIST】
01. North
02. Candy girl
03. fuse
04. Fade away
05. awake
06. Cool Wind
[text:金子厚武/photo:河本悠貴]
▽DATS official site:http://www.datstheband.com
ウソツキ
7月にリリースしたミニアルバム『一生分のラブレター』が明らかにこのストーリーテリングでバンドを転がしていく、ウソツキにとって新たな大きな武器になったことを実感させるステージだった。竹田昌和(Vo,Gt)は上下白の衣装でハットも白。演者として、そして物語を駆動させる存在としての自覚が眩しい。1曲目の「一生分のラブレター」の、出音からしてすでにサブステージであるFUTURE STAGEじゃ小さすぎる。FRONTIER STAGEのアクトに負けない曲のポピュラリティ、そして演奏力の構築。コースト全体から拍手が聞こえた。
「決して嘘をつかないバンド、ウソツキです、よろしく」というおなじみの挨拶に続いて「毎日毎日、二転三転、そんな日々のことを歌います」という竹田のMCで始まった「ネガチブ」では「ネガネガ」「チブチブ」「UK」「FC」のコール&レスポンス。”ネガティヴ”を叫ぶというより、日常として歌う。マイナーの中毒性のあるサビが「一生分のラブレター」とは対照を描きつつも、このバンドのポップな根っこをむしろ明らかにしていく。圧のあるキックをやすやす放つ林山斗(Dr)、メロディアスなベースを弾く藤井浩太(Ba)、鮮やかなフレージングを奏でる吉田健二(Gt)とメンバーのキャラもさらに明確になった印象だ。
「旗揚げ運動」では”踊らされる”ことの意味を再び自覚させられたり、竹田の早口でまくしたてるトーキング調のボーカルがさらに鋭利になっていたり、フロントマンとしての成長に瞠目。「ハッピーエンドは来なくていい」での抑えた照明、そして後半、うっすら客席が照らされ、ここにいる人にとっての幸せやそれが注意していないとすぐ壊れてしまうことや、そんな諸々を想像させる。どんな終わりより、今”幸せに思えること”があることや、その人がいることの素晴らしさ。この曲の本質ってそういうことなのでは?と感じる素晴らしい演奏と演出だった。
そしてウソツキにとってのみならず、UKFCで欠かせない場面になった「新木場発、銀河鉄道」のイントロのギターが実際に汽車のように駆動するアレンジのシンプルだけどアイディアに満ちた楽しさ。竹田は「僕らDAIZAWA RECORDSからデビューしてUKFC3回目です。何が言いたいかというとここはFUTURE STAGEですけど、これからの一年でUK.PROJECTを背負って立つバンドになろうかなと思っています。」
と、まっすぐに言った。しかも宣誓というよりすでに包容力すらある。日常の延長線上にある物語の力でリスナーを牽引する力を去年より何倍も増したウソツキの本気にかなり喰らってしまった。
【SET LIST】
01. 一生分のラブレター
02. ネガチブ
03. 旗揚げ運動
04. ハッピーエンドは来なくていい
05. 新木場発、銀河鉄道
[text:石角友香/photo:河本悠貴]
▽ウソツキ official site:http://usotsukida.com
asobius
「サウンドチェックだからね」と断りを入れるぐらい甲斐一斗(Vo)のボーカルがフロアの空気をガラッと変えてしまうほど鮮やかで本気だ。本番を前に1曲多く楽しめてしまったぐらいの充実感。asobiusの音楽的な豊饒は5人バンドの常識を良い意味で完全に逸脱している。
スペイシーな中にトライバルな要素もあるSEに乗って登場した彼らはすでにバンドという名の”架空のサントラを奏でるオーケストラ”だ。おなじみ甲斐のタクトを振る姿がごくごく自然に映り、「made of my friends」が流れ出す。髙橋真作(Gt)と杉本広太(Gt)各々の研ぎ澄ましたフレージングを軸に、エンディングに向かう静かなパートでの演奏と歌が織りなす層の美しさに息を飲む。
地鳴りのようなバスドラのローに繊細なアルペジオが重なって、そのまま”サントラの第二楽章”的に「I’m in the love」へ。妙な例えだがレディオヘッドから変拍子と強迫観念を抜いて、大げさになりそうなセンチメントやスペクタクルをギターバンドで表現するダイナミズムに押しとどめる、asobiusの美学やバンドとしてのメカニズムは稀有だ。完全にフロアも陶酔状態で、いい意味で黙らせてしまう。もはやステージの大小は関係なく、コーストを縦に広く使っているだけだと思う。それぐらいサウンドのレンジが広い。
演奏と演出の奇跡的なマリアージュという意味では、「golden wombs」のエンディング近くにフロア上のライティングを星の瞬きそのもののようなストロボライトで表現していた(ようにしか思えないぐらい見事だった)場面をフロアのオーディエンスは気づいていたのだろうか。さりげないけれど、そんなところにもasobiusのライブ空間へのこだわりや体験的な世界観を見てかなり感極まってしまった。
ラストは最新アルバム『parade of life』から、ラストナンバーの「song for you」。5人の出す音、ビート、声がタペストリーのように重層的に織り込まれて、もはや時代巨編。MCなしで一気にコーストの空気を塗り替えてしまったのだった。しかもその時代巨編はギターの音色や選び抜かれたフレーズ、力強く踏みしめるようなビートの構築、もちろん物語とエモーションを伝える歌も、映画でいうところの”CGは一切使っていません”である。それでいてエレクトロニックなサウンド以上に宇宙を感じさせるasobius。もっともっとこの美しい音の奔流に身を任せていたかった。
【SET LIST】
01. made of my friends
02. I’m in the love
03. golden wombs
04. song for you
[text:石角友香/photo:河本悠貴]
▽asobius official site:http://asobius.com
PELICAN FANCLUB
去年8/5にDAIZAWA RECORDSからミニアルバム『PELICAN FANCLUB』をリリースして『UKFC2015』に初登場。UKプロジェクトから初めてリリースしたばかり、しかもリリースは当イベントの2週間前とあって、初見の人が多かったのか、「誰も踊ってない」「誰も歌ってない」つまり「誰も盛り上がってない」時間だった。ノリにくい音なわけじゃない。勢いのある音のギター・バンドなのに。
ただし。にもかかわらず、フロアを埋めた人たち、ほぼ誰も途中で出て行かなかった。みんなつっ立ったままで、終わるまでじいっとステージを凝視し、曲を聴き続けていた。つまり、そういうバンドだ、ということだ。
今年は全5曲中、4曲目の「Dali」を除く4曲が、6/8にリリースされたばかりのミニアルバム『OK BALLADE』収録曲。
クルマダヤスフミのギターに合わせて他の3人がフロアにハンドクラップを求めてから、「アンナとバーネット」でスタート。以降間奏のたびにハンドクラップが起きるが、エンドウアンリが歌い始めるとみんな手を叩くのをやめて聴いている。やはり。去年は初見でじっと聴き、今年は知っていてじっと聴く、みたいな空気。さらに軽快かつアッパーな曲調の「Ophelia」でも、サビで前方で腕が上がる程度で、みんなじっと観ている。
「アツくなろう! 僕、コンタクトレンズ入れてるからすっごい見えるんですよ」とエンドウアンリがあおり、クルマダヤスフミが大きなアクションでハンドクラップを求め、フロアみんながそれに続いて「説明」に突入。しかし、平歌をエンドウアンリがラップし、サビでグラインド・コアのバンドみたいに「ギャーッ!!」と叫びを上げながらギターを床に捨てたあたりで、またオーディエンスみんな固まるしかなくなる。あっはっは。
曲の途中で、自分は祭りは嫌いだけど今日は祭りをしたいと伝えてオーディエンスの腕を左右に振らせ、それに合わせてフリースタイルでラップしまくった挙句サビでまたスクリーミング。クルマダヤスフミはステージ下に飛び降り、そのせいでしばしギターの音が出なくなる。ぐっしゃぐしゃ。なんなんだ。かっこいいじゃないか。ちなみに、フロアもスタンドも埋まったまま。
テンション上がりすぎてわけわかんなくなったクルマダヤスフミが、突然メンバーに「U」「K」「F」「C」の振りを求めたのちに、「自分が好きなものが自分にとって正義だし正解だ、だから僕はUKプロジェクトが大好きなの!」などとエンドウアンリがひとしきり叫んでから「Dali」へ。叙情性に満ちた美しいメロディが、この曲に関しては最後まで破綻することなく、リズムとコードの上で転がっていく。
「未来を踏みつぶして過去にしていこう、今を楽しもう」というひとことから、ラストは、もっとも開放的で高揚感に満ちた「記憶について」。今日イチの数の拳が盛大に突き上げられた。
【SET LIST】
01. アンナとバーネット
02. Ophelia
03. 説明
04. Dali
05. 記憶について
[text:兵庫慎司/photo:河本悠貴]
▽PELICAN FANCLUB official site:http://pelicanfanclub.com
SPiCYSOL
サウンドチェックからそのまま本番に入っちゃう気さくさ、初出場だった昨年と同じ。そして1曲目が「AWAKE」だったのも昨年と同じだが、UKプロジェクトから初リリースしたばかりだし音楽性的にもUKでは異質だった1年前と比べると、音楽的には異質のままかもしれないがフロア前方で盛り上がってるのはあきらかにファンだし、後ろの方も「存在は知ってる」「だから巻き込まれるのもやぶさかではない」みたいな感じで、身体を揺らす人や腕を挙げる人が増えていくところが、その1年前と違うところ。アッパーなスカ・チューン「PABUK」では、PETEのホーンとKENNYの歌&アクションに合わせ、フロア中でちぎれんばかりにタオルが回った。
「ゲスト紹介していいか!」というKENNYの声に導かれ、TOTALFATのShunが登場。「汗ひいてるヒマねえぞおまえら!」などとフロアをあおりまくり、ダビーなインストに合わせてしばしコール&レスポンスののち、Shunが参加したTOTALFAT「Room45」のカバー曲(最新ミニアルバム『Tropical Girl』収録)へ突入。ダブに生まれ変わった「Room45」にオーディエンス、一瞬にしてなじみ、ShunとKENNYのツインボーカルがフロアの温度をぐんぐん上げていく。
フロアはもちろん、脇の方もうしろの方も2Fスタンドも、腕を挙げて上下させる例の動きでみるみる埋まっていく。壮観。
AKUN「TOTALFATからSPiCYSOL、BIGMAMAでしょ? この流れ考えた人、天才じゃないですか? 誰?」KENNY「社長です(笑)。社長に拍手を!」とか言いながら、次は「Around The World」。いつまでも聴いていたくなる、そして自分も声に出して歌いたくなる、素朴で美しいメロディで、Shunが去ったあともオーディエンスを離さない。
KENNYがオーディエンスにお礼を言い、BIGAMAMAとHYのツアーに参加するのでぜひ遊びに来てほしいと告げてからのラストは、『Tropical Girl』収録のダブ・バラード(ってそんな言葉ないけど、でもそういう曲調)、「Coral」。PETEのホーンが高らかに響き、KENNYの──言葉とメロディの両面とも情感に満ちた歌が広がっていくさまを、みんなじっと味わっていた。で、歌が終わると、大きな拍手がフロアを包んだ。
「Tropical Girl」がリリースされたのは今年6/22だけど、そこからの曲は2曲にとどめ、今日この場にふさわしい、かつ自分たちらしいセットリストを組んできたんだな、ということに、終わってから気づいた。普通こういうお祭りで、最後にバラードとかやらないし。で、それをやってすばらしい空気を作ること、決してたやすいことではないし。
【SET LIST】
01. AWAKE
02. Rising Sun
03. PABUK
04. Room45 ft.Shun(TOTALFAT)
05. Around The World
06. Coral
[text:兵庫慎司/photo:河本悠貴]
▽SPiCYSOL official site:http://spicysol.com
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